MicrosoftがIT分野における圧倒的な存在となって以来,その帝国に対するチャレンジは次々と登場してきている。ここ数年を見ても,Microsoftの重大な収益源であるOfficeの牙城を崩そうと,いくつもの互換ソフトやオンライン型のサービスが登場している。また,ネットブックに代表される低価格パソコンも,その1つの動きといえるだろう(関連記事)。だが,残念ながらそのどれもMicrosoftを脅かすまでの存在にはなっていないようだ。
Take1:大企業の大部分は相変わらずOfficeを利用
米Forrester Researchは,米Microsoftの「Office」に関する調査で驚くような結論を出した。Officeと競合するようなソフトウエアやクラウド・コンピューティング・サービスは数多くあるものの,本当のライバルは事実上存在しないというのだ。
矛盾しているように見えるが,実際になんら競争関係にないことが分かれば納得できる。ForresterのアナリストであるSheri McLeish氏は「Officeの財務基盤は世界的な大企業によりしっかりとささえられている」と述べ,競合製品/サービスを使っている企業は全体の8%にとどまると指摘した。
Officeを使っている企業の8割はすでに「Office 2007」へ移行しており,残る2割は古いバージョンのOfficeを使っているらしい。
Take2:ARMプロセッサ搭載のWindows 7ネットブックは実現しない
現在販売されているネットブックは,大多数が「Intel Atom」といった一般にパソコン向けとされるマイクロプロセッサを搭載している。しかし今後登場してくるネットブックは,これまでスマートフォンやそのほかの小型モバイル/デバイスに使われてきた「ARM」プロセッサを採用するようになるだろう。ところがMicrosoftはARMプロセッサに興味を示さず,次期クライアントOS「Windows 7」をARMプロセッサに移植しないとしている。
Microsoft副社長のSteve Guggenheimer氏は2009年6月第1週,「当社は昨年(2008年)『パソコンのような外見でパソコンのように動く機械は,パソコンと同じ機能や用途が求められる』といったことを学んだ。そのため,こうした発想はうまくいかないと思う」と述べた。この発言は,ネットブック界のパイオニアである台湾AcerがARMプロセッサと本来スマートフォン向けである米Google製ソフトウエア基盤「Android」を採用するネットブックの販売を間もなく開始する,というニュースを受けてなされたものだ。
もっともMicrosoftの言うことは,確かに的を射ているかもしれない。ノート・パソコン型デバイスを見たら,ノート・パソコンのように使えると思うはずだ。それなのに,プリンタや外部ディスプレイをつなげないと知ったら,失望するだろう。