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Q 1カ月ほど前に1度便に血が混じっていました。そのときは「痔のせい」と思って放置していましたが,3日前にまた便に血が混じっていたので,さすがに心配になってきました。実は去年の人間ドックの「便潜血検査」でも陽性と言われたのですが,再検査の結果は陰性でした。(男性,44歳,プロジェクト・マネジャー)

 通常,食べ物が口から入り便として体外に出ていくまでに,便に血が混じることはありません。便に血が混じるということ自体,「異常事態」であると考えてください。ですので,便に血が混じったとなれば,その原因を確認しなければなりません。相談者の場合,出血の原因が「痔」なのか,そうでないのかを,まずはっきりさせるべきです。

 昨年も「便潜血検査」が陽性と言われ,再検査では陰性だったそうですが,この便潜血検査は消化器官のどこかで血液が数cc出血しても検出できる大変精度の高い検査です。一度陽性になった後で再検査するのは全くナンセンスな話で,陽性となった時点で異常の可能性があるわけですから,再検査ではなくて次のステップとして精密検査(大腸内視鏡検査やバリウム検査)を受けるべきでした。

 相談者の場合,昨年の段階ですでに便潜血検査が陽性だったことに加えて複数回の血便があるということですので,痔や大腸の一過性炎症というよりも,やはり継続的な出血を起こす原因が,大腸内にある可能性が高いと言えます。早々に,病院に行き精密検査を受ける必要があります。

 便潜血検査が陽性だったときに精密検査を実施すると,だいたい2~3%の人に「大腸ガン」が発見されます。逆に言えば97~98%の人は,痔や大腸ポリープ,大腸憩室症(大腸の壁が小さく外側に膨らんだ症状),一過性大腸炎などの疾患ということになります。

 便潜血検査後の精密検査で見つかる大腸ガンは「早期ガン」であることが多く,早期ガンの場合治癒率は100%です。そういう意味で,便潜血検査は大腸ガンの検診としても,非常に有効なのです。

 一般に大腸ガンにかかるのは60歳代が最も多いのですが,男性は女性よりも若いときに発症する傾向にあり,30歳代で大腸ガンにかかってしまう人もいます。大腸ガンの早期発見のためにも,特に40歳代や50歳代で便に血が混じっていたら,必ず腸内視鏡やバリウム検査などの精密検査を受けるべきです。

 大腸ガンは,遺伝よりも食事の偏りといった環境影響の方が大きいとされています。

 特に,食生活の欧米化(動物性脂肪の摂取量の増加)が,大腸ガンの発症に強く影響しています。牛肉や豚肉,あるいはその加工品といった脂質の多い料理を食べると,その消化を担当する胆嚢の胆汁分泌が増えて大腸粘膜に過度の刺激を与え,粘膜障害を引き起こす機会が増えるからです。

 野菜や海草などの繊維成分の摂取不足も,大腸ガンの原因になります。繊維成分が足りないと大腸内での胆汁を薄める力が弱くなるほか,腸内の細菌バランスが崩れます。腸には約100種類の菌が生息しているのですが,体に有用なビフィズス菌などの「善玉菌」よりも,発ガン物質を作り出す「悪玉菌」の方が増え,結果的に大腸ガンも発生しやすくなるのです。30歳代~40歳代になったら,食事は魚中心にして,豊富な野菜の摂取を心掛けたいものです。

浜口伝博
産業医
産業医科大学医学部卒業,専属産業医として東芝,日本IBMに勤務し,産業医活動のほか,健康管理システム開発を手掛ける。2005年9月からハマーコンサルティング代表。日本産業衛生学会理事,日本橋医師会理事,産業医科大学非常勤講師。著書は「健康診断ストラテジー(バイオコミュニケーション,共著)」など多数。日本産業衛生学会認定指導医,労働衛生コンサルタント