PR
Q 半年ほど前にみぞおちに差し込むような強い痛みを感じました。最近も何回か,食後にみぞおちに鈍痛があり,背中が重い感じがします。プロジェクトのストレスから,ほぼ毎日寝る前に日本酒で3合(ビールで3本程度)を飲んでいるので,そのせいかと心配です。(男性,38歳,プロジェクト・マネジャー)

 アルコールを習慣的に飲んでいる人が過去に強い上腹部痛を経験し,最近も食後の上腹部痛や背部痛がある,となると,すい臓の病気である「慢性すい炎」の可能性があります。

 慢性すい炎は,すい臓の中を走っているすい管(細いチューブのようなもの)が,何回か炎症を繰り返すことで変形したり狭くなって,すい液を十二指腸に排出することが困難になっている状態を言います。すいガンがすい管を圧迫することが原因で起こることもあります。

 つまったすい管の上流では管内の圧力が上がって血液循環が悪くなるので,放っておくと,炎症はさらに悪化します。がまんせず早めの受診が必要です。

 慢性すい炎の最も大きな原因は飲酒です。実際,最近の調査では,アルコール性のすい炎の割合が69%とされています(日本医師会雑誌2005年2月vol.133,No3,p318)。国内のアルコール消費量が増加していることから,日本ではすい炎の患者は増える傾向にあります。

 食事に脂肪分が多い人も要注意です。遺伝や体質も影響していますが,お酒を飲みながら油分の多い食事をとる人が,もっともすい炎にかかりやすいのです。喫煙も,すい炎の発生リスクを上げることになります。

 診断では,すい炎を確認する前に,まずファイバースコープ検査で胃や十二指腸などを検査します。胃炎や胃潰瘍,十二指腸の病気も考えられるので,それらを調べるためです。

 次に血液検査で,すい臓に異常がないかどうかを調べます。具体的には,「アミラーゼ」,「リパーゼ」,「エラスターゼ」という3つの酵素を検査します。

 すい炎にかかると,すい液の源泉である「腺房細胞」が破壊されるので,そこに存在しているアミラーゼ,リパーゼ,エラスターゼが血液中に漏出します。このため血液検査でこの3つの酵素を調べることで,すい炎かどうかが分かるわけです。

 腹部の超音波検査(腹部エコー)も実施します。すい管が詰まると,詰まった部分の上流が通常よりも太くなります。これを超音波検査で調べるのです。すい臓自体も炎症のために大きくなるので,これも超音波検査で見ることができます。超音波検査は簡単にできますし,まったく痛みもありません。

 ただしすい臓は胃のちょうど裏側にあるため,胃に空気が入っていたりすると超音波検査の映りが悪いことがあります。そこで,すい炎が疑われる場合は,CT(Computerized axial Tomography)スキャンでさらに精密に検査します。

 慢性すい炎になると,完全に元どおりになることは難しい場合が多いのですが,命にかかわるような致命的な病気ではないので,安心してください。慢性すい炎の治療方法としては,原因を取り除いて進行を食い止めるしかありません。つまりアルコール性のすい炎の場合,治療方法は飲酒をやめることが最優先です。もちろん,脂肪分の多い食事も控えなければなりません。

浜口伝博
産業医
産業医科大学医学部卒業,専属産業医として東芝,日本IBMに勤務し,産業医活動のほか,健康管理システム開発を手掛ける。2005年9月からハマーコンサルティング代表。日本産業衛生学会理事,日本橋医師会理事,産業医科大学非常勤講師。著書は「健康診断ストラテジー(バイオコミュニケーション,共著)」など多数。日本産業衛生学会認定指導医,労働衛生コンサルタント