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 NTTには「2010年問題」がある。持ち株会社を廃止して,NTT東西やNTTコミュニケーションズといった事業会社を完全に資本分離する。総務省が主導するこうしたグループ再編成論議が始まるのだ。

 本書は2010年問題を巡るNTTと競合通信事業者,そして総務省の闘いを追ったドキュメンタリである。NTTが自身の解体を阻止しようと巡らせる深謀を,関係者への徹底取材で浮き彫りにする。

 本書はNTTを「儲けすぎてはいけない企業」と喝破する。眼下の経済危機で2008年度に日本最高益企業の座を得るのが確実となっても,不況に強い理由を説明することもなく,あくまで環境要因であることを強調。その姿勢は異様にすら映ると評する。

 度を超した謙虚さのすべてが2010年問題を回避するための深謀ではないか。風当たりが強くなるのを恐れて,あえて不振を演出しているのでは―。深読みが過ぎるとしながらも,一貫してこの視点からNTTの動きを分析する。

 「今こそNTTは自社の都合を廃して,次世代に向けた通信業界のグランドデザインを描くべきだ」。本書はNTTに,こうエールを送る。日本のICT(情報通信)産業の問題点をつかむのに好適な一冊だ。

NTTの深謀

NTTの深謀
日経コミュニケーション編
日経BP社発行
1890円(税込)