PR

 「これからはデジタルネイティブの時代がやって来る。それに気付かない会社は早晩淘汰される」──。本書はそんな脅し文句で始まる。言ってみれば,現在社会の中枢にいる「ノンネイティブ」世代に向けた,デジタルネイティブ攻略本だ。平易で読みやすい文章だが,その指摘は数々の示唆に富んでいる。

 デジタルネイティブとは,生まれたときからパソコンやインターネットが身近にあふれ,それを使うことが当たり前になっている世代のこと。本書では,平成元年以降に生まれた世代と定義している。

 1976年生まれの著者は,自らを「ノンネイティブ」とし,デジタルネイティブとの間には埋められない溝があると語る。決定的な違いはやはり「ケータイ」の存在だ。

 この点について著者が描くエピソードには,多くのノンネイティブが膝を打つだろう。ケータイが無い時代,女子生徒の家に電話をかける時は,リビングの電話に親が出ないように相手に事前に頼んでいく必要があった。しかし物心ついた時から隣にケータイがあるデジタルネイティブは,思い立ったら即コミュニケーションを取れる環境にあり,その違いは大きい。

 さらにはケータイにはワンセグなど娯楽機能も付く。ノンネイティブが中高生の時代には,自分の部屋にテレビがある家庭はまれだった。その一方デジタルネイティブはケータイのおかげで,夜中でもベッドの上でテレビ番組を見て,さらに友達と電話やメールでコミュニケーションを同時に取れる。著者は「ノンネイティブである私たちは,デジタルネイティブとの圧倒的な生活スタイルの違いにまずは気付くべき。その差に気付かなければ,どんなサービスも成功するのは難しい」と続ける。

 デジタルネイティブの生態を理解しなかったが故に失敗した例として著者は,USENのパソコン向け動画配信サービス「GyaO」を取り上げる。著者は「デジタルネイティブはパソコンでもエンタテインメントを見るだろうという,ノンネイティブの発想で取り組んだところに最大の敗因がある」と指摘。デジタルネイティブの生活様式には,パソコンを介したエンタテインメントがほとんど無いため,コンテンツを充実させても厳しいということだ。

 本書の後半は,デジタルネイティブが社会に進出する時代に,いかにノンネイティブが生き残るかというテーマに挑む。著者は「これまで以上にコミュニケーションのやり方が重要になるが,ビジネスの本質的な仕組みを知る人が成功することには変わらない」と結論付ける。

 2年後の2011年4月には平成生まれのデジタルネイティブが社会人となる。デジタルネイティブを“自分たちとは違う”と対立するのではなく,その力を生かす視点こそ重要になるのではないか。本書はそんな,来るべき時代の生き残り指南書としても面白く読める。

デジタルネイティブの時代

デジタルネイティブの時代
木下 晃伸著
東洋経済新報社発行
1575円(税込)