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 Webが使える時代の記者でつくづくよかったと思うのは,何と言っても,公開情報を一次ソースからさくさく収集できることである。IT業界の記者が最も多く接する公開情報はプレスリリースだが,上場企業の決算短信などにも,お世話になる機会が多い。

 これらがWebで当たり前に入手できるようになったのはいつ頃だったろう。はっきりとは覚えていないが,おそらくは意外と最近である。プレスリリースや決算短信がほぼ必ずWebに上がっているという状況になったのは,2000年より後だったと思う。

 当時私は日経ソリューションビジネスという雑誌にいて,時々IT関連企業の業績に関するレポート記事を書くことがあった。しばしば,郵送やFAXで決算短信を取り寄せなくてはならなかった記憶がある。

 「いや~昔は大変だったよね」と過去の話で済ませたいところだが,実は今,この流れに逆行する動きを感じている。仕事をしていて,「コピペ(コピー&ペースト)できない公開文書のPDFファイル」に遭遇するケースが増えているのだ。それも,かなり多くの人に引用されるはずの決算短信が,である。

大手50社中13社がコピペ不可

 決算短信のPDF文書に書かれている数値がコピペできないというケースは以前にもあった。作成側がセキュリティの設定でコピーや編集を禁じているためだろう。しかしそれは,何百社とある中で1~2社程度とわずかなものだった。だが最近,その割合がじわじわと増えている。決算関連の記事を書くときは,PDF文書を画面で見ながら業績データを転記したり,決算短信を印刷してから転記したりしている。これでは郵便やファクシミリでもらっていた頃に逆戻りである。

 試しにIT業界大手50社の直近の決算短信PDF文書を確かめてみたところ,何と13社が“コピペ不可”になっていた。まだまだ少数派と思っていた(思いたかった)が,現実は違った。さらに,コピペ不可組の顏ぶれを見ると,超大手と言われる企業が3社あることに軽いショックを受けた。

 調べた結果を表にして眺めると,2005年以降,大手が相次いでコピペ不可に“転向”していることがわかった。一体何があったのか?

 公開情報はすべてコピペさせてほしい,と言っているのではない。多種多様な公開情報の中でも,決算短信やプレスリリースなど,多くの人に引用・分析されてしかるべき性質のものについては,どうせなら精度良く引用してもらえる形で提供したらどうでしょう,と言いたいのだ。

 心配ついでに同じ50社のプレスリリースもチェックしてみた。幸い,コピペ不可のものはなかった。私が受け取る多数のプレスリリースも,txt形式,html形式,PDF形式を問わず,今のところコピペ可のものばかりである。今後プレスリリースにまでコピペ不可のトレンドが広がらないことを祈る。