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2004年の通信関係の主な出来事

●「Gmail」登場,Ajax技術が注目を集め始める(4月)

●「iモードFeliCaサービス」端末発売(7月)

●NTT東西,集合住宅向けIP電話「ひかり電話」開始(9月)

 ソフトバンクの日本テレコム買収を始め,2004年は大型買収が相次いだ。

 5月末,ソフトバンクは米投資会社リップルウッド・ホールディングスから約3400億円で日本テレコムの株式を取得すると発表した(写真)。「連結売上高約1兆円,提供回線数は約1000万」(ソフトバンク)の国内3位の通信事業者が誕生した。

 買収の目的の一つは法人向けサービスの強化だ。当時,ソフトバンクは安さを売りに個人向けサービスで成功を収めていたが,法人向けサービスでの存在感は今一つ。さらに,2月には子会社のソフトバンクBBで大規模な個人情報流出事件が起き,同社の信頼性に傷が付いていた。

 買収によって日本テレコムの約17万社もの法人顧客を取り込むだけでなく,法人市場における同社のブランド力を獲得し,信頼性を回復するのが狙いだ。さらに,日本テレコムの光ファイバ網をソフトバンクの網と接続することで,バックボーンを強化できるというメリットもあった。

買収によってWILLCOM誕生

 6月にはPHS業界でも大きな動きがあった。米投資会社のカーライル・グループと京セラが,KDDIからPHS事業者のDDIポケットを約2200億円で買収すると発表したのだ。

 DDIポケットは2001年,業界初の定額パケット通信サービス「AirH"」を投入した事業者。当時PHSの勢いは既に無くなっていたが,カーライルは「安価な定額サービスを多数のユーザーに提供すれば成長は見込める」,「定額サービスでアクセスが集中しても,技術的に携帯電話よりもPHSの方が帯域のひっ迫が少ない」と,ビジネスと技術の両面からPHSに可能性を見て買収に踏み切った。

 10月にはカーライル60%,京セラ30%,KDDIが10%を出資した新会社を設立。この合弁会社は後に社名変更し,「WILLCOM」(ウィルコム)となった。

 なお,2004年6月にはNTTドコモの「パケ・ホーダイ」,11月にはボーダフォン(当時)の「パケットフリー」と,定額制のデータ通信サービスが相次いで始まっている。前年に「EZフラット」を導入していたKDDIも含め,3Gサービス提供事業者すべての定額制料金プランが出そろい,競争が本格化し始めた。

NTT,「2010年に光3000万」を計画

 2004年には,「GE-PON」を使うFTTHサービスが次々に登場した。GE-PONでは,最大伝送速度が1Gビット/秒の光ファイバを分岐させ複数ユーザーで共有するため,提供コストを抑えられる。ソフトバンクBBが10月に,NTT東日本が11月にサービスを開始。11月にはKDDIも翌年からサービスを始めると発表した。いずれも6000円台後半から7000円台前半と,従来よりも価格を安く抑えたサービスだった。

 11月にはNTTが中期経営戦略で「2010年までに光ユーザー3000万」と目標を掲げている。2004年は光アクセス・サービスがコモディティ化を始め,いずれメタルに代わってブロードバンドの主役となるシナリオが見えた年でもあった。