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1. 災害対策のシミュレーションで,被災時のシステムの弱点が浮き彫りになった
2. 当初検討した集中型ディザスタ・リカバリは,コストの問題で断念した
3. システムごとに復旧条件を分析し,分散型ディザスタ・リカバリを構築中だ

 「集中型のディザスタ・リカバリはあきらめるしかない 」「復旧の問題点をもう一度洗い出そう」─。2007年9月,計測・制御機器メーカーである山武の業務システム部では,災害対策訓練を振り返る会議で,活発な議論が交わされていた。

 全社的なBCP(事業継続計画)を進める山武では,2006年から情報システムにおける災害復旧,すなわちディザスタ・リカバリ(DR)システムの構築に取り組んでいる。同社の取り組みは,大きく二つのフェーズに分かれる(図1)。

図1●山武がディザスタ・リカバリ(DR)システムの構築に至った経緯と課題<br>2007年8月に実施した災害対策訓練で,情報システムの災害対策が不十分なことが明らかになった。BCP第2フェーズで改めてシステムごとの復旧策を総ざらいし,低コストなDRシステムを目指した
図1●山武がディザスタ・リカバリ(DR)システムの構築に至った経緯と課題
2007年8月に実施した災害対策訓練で,情報システムの災害対策が不十分なことが明らかになった。BCP第2フェーズで改めてシステムごとの復旧策を総ざらいし,低コストなDRシステムを目指した
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 BCP第1フェーズでは,社内情報システムの災害対策を検討。被災を想定した訓練を実施し,すぐにでも改善できる部分に対処した。この訓練結果を受け,具体的なDRシステムの構築を検討したのが,現在にいたるBCP第2フェーズだ。工場や事業所に分散しているシステムを1カ所のサイトに統合してバックアップする「集中型DR」ではなく,分散したままの状態でシステムを復旧させる「分散型DR」の構築を進めている。

 以下では,この二つのフェーズで直面した課題を業務システム部のメンバーがいかに解決してきたか,その軌跡を見ていこう。

BIAで社内システムの弱点が明確に

 「訓練の振り返り会議では,何が足りないのかを徹底的に話し合った」(業務システム部 部長 新井弘志氏)。

 2007年8月29日,業務システム部は大地震を想定した災害対策訓練を実施。「サーバー・ルームとの通信ができなくなった」「サーバーが倒れて損傷した」などのさまざまな被害を想定し,被災直後から完全復旧までを検証した。訓練には,業務システム部のほか,総務部門や工場などで災害対策にかかわる要員が参加した。

 この訓練に備えて2006年から実施していたのが,災害が発生したシステムがどのような状態になるか,あるいは業務にどのような影響があるかをシミュレーションする「ビジネス・インパクト分析(BIA)」である。このシミュレーションの結果,さまざまな問題が浮き彫りになった。

 典型的な例が,同社の社内ポータル・サイト「Yamabico」だ。Yamabicoは,全従業員が毎日必ず見る,業務の入り口になるサイト。災害時には,このサイトが情報伝達の要となる予定だった。しかし,それだけ重要なシステムにもかかわらず,「予備サーバーすらない」(業務システム部 システム開発グループマネージャー 植竹務氏)。さらに,サーバーの調達を含めて復旧までに1カ月もかかることがBIAのシミュレーションで明らかになった。結局Yamabicoは,被災時に別の拠点にあるサーバーで縮退運転するようにし,何とか1日で復旧できる仕組みに改善することになった。だが,この一件や訓練の結果などから予想以上に「災害対策が不十分」(植竹氏)であることが明確になり,一刻も早いDRシステム構築が迫られることになった。