要件定義の計画とは,要件を具体化するために実施するプロセスの予定をまとめたものである。このプロセスの実施状況を「見える化」することは,問題の兆候を早期に察知して,トラブルの発生を未然に防ぐために効果的である。
見える化に必要なのが,作業の進捗状況を計測可能なプロジェクト計画だ。ユーザーとのセッション計画を作っただけで要件定義を始めてしまうと,予定セッションを消化したという進捗は分かっても,実際の要件定義がどの程度完了しているかをとらえられない。プロジェクト全体計画を受けた,要件定義フェーズのための実施計画を別途作成する必要がある(図1)。
作業の進捗をとらえられるよう,WBS(Work Breakdown Structure)の最下位タスクは成果物とひも付けるとともに,工数5人日以下にブレーク・ダウンする。進捗の見える化ツールには,EVM(Earned Value Management)のグラフを用いて,工数ベースの計画と実績を把握するとよいだろう。
要件定義フェーズの計画を立てる際は,作業手順や成果物/WBS/体制などを検討し,実現可能性の高いものにすることが重要である。そして,要件定義開始時にはキックオフ・ミーティングを開催し,ユーザーを含むメンバー全員でこれらの計画を理解,共有するようにしよう。チーム全体が目標達成に向けた共通意識を持つことが成功の第一歩となる。
計画順守状況の監視を軽視してはいけない

プロジェクトそのものの計画に加えて,計画が順守されていることを監視,レビュー,フィードバックをするための,プロジェクト管理計画の立案も重要である。プロジェクトの規模や複雑性,難易度にも依存するが,当初の計画通りにすべてを進められるプロジェクトはほとんどない。要件定義においては,作業工数見積もりや計画立案が特に難しいことから,計画自体を管理することが重要になってくる。要件定義作業が佳境に入るとおろそかになりがちだが,計画マネジメント・フローを軽視してはいけない(図2)。
日本情報システム・ユーザー協会が実施した「企業IT調査2008」によると,IT要員に最も必要な能力は「戦略,企画能力」「要件定義能力」「プロジェクト・マネジメント能力」という結果が出ている。計画作成や実施状況の監視作業といったマネジメント活動をきっちりと実施することは,要件定義能力を高めることにつながる。
日本IBM マネジャー エグゼクティブPM
日本IBM シニアPM