PR

 要件定義フェーズのアウトプット(成果物)を取り決め,それらの品質基準や完了基準を事前に設定するのは容易なことではない。しかし,こうした作業を後回しにして,要件のヒアリングを始めてはいけない。要件定義の作業がどの程度進んでいるのかとらえられなくなってしまうからである。

 要件定義を始める前に成果物を選定し,その完了基準を設定しておくと,進捗管理がしやすくなる。ほかにも,次のような恩恵が得られる。

●具体的な進め方のイメージがわく
●作業計画が立てやすくなる
●作業工数の見積もりがしやすくなる

 成果物の選定やその完了基準の設定は,なるべく効率よく実施したい。メソドロジの標準的なフレームワークを利用できる場合には,それを基にして,プロジェクトごとの個別の事情や特徴を反映させるとよいだろう。こうしたプロジェクトごとの事情や特徴を反映させる作業を「テーラリング」と呼び,図7に示した手順で行う。

図7●テーラリングの順序
図7●テーラリングの順序
[画像のクリックで拡大表示]

 テーラリングでは,まずプロジェクトでベースとするメソドロジを選定し,フェーズ構成やアウトプット一覧,WBSのテンプレートを得ることから始める。そして,必要に応じてそれらのテンプレートをプロジェクトに合わせて改変していく。テーラリングはプロジェクト開始前にのみ実施すればよい,というものではない。現実的な計画のベースラインを維持できるよう,プロジェクト開始以後も各フェーズの開始時や変更発生時などに実施するよう努める必要がある。

作業を始める前にまず標準化しておく

 ビジネス要件定義の代表的なアウトプット例を図8に示した。各ダイアグラムの表現方法やレベルは,プロジェクトによって千差万別である。また,使われ方によっても大きなばらつきが生じる。

図8●ビジネス要件定義のアウトプットの例
図8●ビジネス要件定義のアウトプットの例

 均質なアウトプットを得られるよう,プロジェクトごとに,各ダイアグラムについて標準化を図ることが望ましい。プロジェクトの特徴に合わせて記述フォームをカスタマイズし,記述内容を明確にしておく。記述サンプルを用意すると効果的である。

 さらに,どこまでできればそのフェーズを完了とするのかについて基準を設定し,進捗管理のベースラインとする。繰り返し作業によってアウトプットを洗練する場合は,それぞれの完了基準を設定する必要がある。

 標準化の結果やサンプルは成果物作成ガイドとしてまとめ,説明会を開催してメンバーに伝えるとよい。また,アウトプットが作られ始めたタイミングでレビューを行い,標準化のガイドに沿っているかを確認しておこう。チームや個人によってもばらつきが生じるので,バランスよくサンプリングすることが重要である。

村石 岳嗣(むらいし たけし)
日本IBM マネジャー エグゼクティブPM
1989年にキャリア採用で日本IBMに入社。複数のシステム構築プロジェクトでプロジェクト・マネージャを務める。PM学会代議員,PM学会リスクマネジメント研究会会員。著書(共著)に『プロジェクトマネジメント大全』(日経BP社)がある
水井 悦子(みずい えつこ)
日本IBM シニアPM
1996年にキャリア採用で日本IBMに入社。製造業や流通業の顧客を中心に,SIプロジェクト・マネージャとしてシステム企画,要件定義からデリバリーまでを担当。PM学会会員,PMI会員