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 部署や役職など立場の異なるメンバーが集まって議論する会議では,お互いに探り合いながら遠慮がちに話す傾向があり,本音を言いにくい雰囲気になりやすい。これでは参画意識は高まらない。そこでファシリテータは,メンバーが本音で発言しやすい雰囲気を作る必要がある。筆者が実践している方法を紹介しよう。

 1つは,メンバーに発言してもらいたい内容に関して,事前に記入式のアンケートを取り,それを会議での議論のたたき台にする,という方法だ(注2)。例えば「顧客対応に関して,問題だと感じていることは何ですか」といった質問に答えてもらい,回答結果を整理した資料を会議冒頭で配布する。会議の場では言えないことでも,アンケートには書きやすい。それを会議でいったん俎上に乗せてしまえば,本音を言いやすくなる。

 アンケートを取る際には,回答するときの視点・視座・視野を明示しておく。例えば前述した「顧客対応の問題」では,効果的で一貫性のある顧客アプローチを阻害している問題について(視点),部署を代表する立場で(視座),営業・サービス部門の業務を対象に(視野),回答してもらう。

 このほか,本当に重要なことは何かをメンバー各自に考えてもらうために,「重要なこと3つに絞って」といった条件を付けるのも有効である。

話しやすい空気を作るルール

図5●会議でメンバーの本音を引き出すために役立つルールの例
図5●会議でメンバーの本音を引き出すために役立つルールの例
筆者が効果を実感しているルールを示した。事前にプロジェクト・マネジャーなどの承認を得ておき,会議の冒頭で宣言し,壁などに貼り出すとよい。ルールを守ろうとしない人がいたら穏やかに諭し,休憩時間などに個別に話すなどして説得する。
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 本音を引き出すもう1つの工夫は,会議の冒頭で「ルール」を宣言することだ。筆者がよく使う5つのルールを,図5に示した。

 1つ目は「経営的見地に立つ」。これは先に述べた視座の設定に当たる。所属部門や個人の立場にとらわれず,企業全体のことを考えて発言してもらうのに有効だ。

 次の3つのルール,すなわち「全員の立場は対等」,「批判は厳禁,討論は自由」,「建前無用」は,無用な気遣いや意見のつぶし合いを防ぐためのルールである。

 最後の5つ目は「結論をメンバーの総意とする」。結論に責任を持たせ,意見を言わないと了承したと見なす,ということをメンバーに意識させて発言を促すわけだ。

 このようなルールは,ファシリテータが独断で設定すると,メンバーから「何様だ」と反感をもたれかねない。必ず事前にプロジェクト・マネジャーから了承を得ておくことが重要だ。そのうえでルールを大きな紙に書いて貼り出し,会議の冒頭でプロジェクト・マネジャーから了解を得た旨を伝えて,ルールを1つずつ説明する。

 最初のうちはルール違反が頻発するものだが,厳しく取り締まるのはナンセンスである。「この場ではこのルールですよ」と,貼り出した紙を指してやんわりと指摘する。

水田 哲郎(みずた てつろう)
日立製作所 ビジネスソリューション事業部 ビジネスシステムコンサルティング部 部長 上席コンサルタント
1990年,日立製作所入社。製造業・流通業の顧客を中心に,業務改革を伴うシステム開発プロジェクトを担当し,コンサルタントとして活躍。日立社内の「コンサルティング力強化プロジェクト」でリーダーを務め,ファシリテーションを含むコンサルティングの標準技法を開発した