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メンバーの「引き継ぎ」は,人の出入りが多いプロジェクトには付き物である。しかし,引き継ぎをうまくマネジメントしているプロジェクトは非常に少なく,同じ過ちが何回も繰り返されている。7つの典型例を通して,引き継ぎに潜む問題点を見ていこう。

後藤 年成
マネジメントソリューションズ マネージャー PMP


 ある程度の規模があるシステム開発において,プロジェクトの立ち上げから本番移行を見届けるまで,一貫して同じメンバーで作業を実施することは,ほとんどないでしょう。小規模案件や保守作業を除けば,少数のメンバーで要件定義を始め,開発・テストに向けてメンバーが増えていき,本番移行に向かってまたメンバーが少なくなっていくはずです。

 この「メンバーが増減するとき」には,プロジェクトマネジメントにおける重要な課題があります。まず,追加メンバーが着任する時は,新メンバーに対してプロジェクトに関する説明や,プロジェクトマネジメント,プロジェクト内のルールについて十分に説明しなければなりません。また,メンバーが離任する時も,後任者への引き継ぎを十分に実施する必要があります。

 もっとも,追加メンバーの着任時は,最初に十分な説明をしないとプロジェクトの運営に支障を来たすため,これを怠るケースはさほど見られません。仮に細かい説明を多少後回しにしたとしても,日常業務の中でキャッチアップできる場合があり,問題が顕在化しにくいという面もあります。

 筆者の今までの経験からして,問題はメンバーがプロジェクトを去るときに頻発します。離任時の「引き継ぎ」がうまくいかないのです。着任時に比べ,あまりにも場当たり的な対応になっていることが多いと感じています。

前任者と後任者---その双方から見た「いいかげんな引き継ぎ」

 読者の皆さんは,離任時の引き継ぎ作業や担当者の離任後に困った経験をしたことはないでしょうか。以下の例は,筆者が今までに実際に経験したことのある出来事です。皆さんも一度は経験したことがあると思います。

◆自分から後任者へ引き継ぐとき

(1)引き継ぎたくても後任者が決まらない
(2)何を,どこまで引き継いだらよいのか分からない
  (機密事項まで引き継いでよいか?)
(3)後任者に引き継ぐ余力がない
(4)貯まっている代休を取得するよう,上司から命じられる
  (新しい現場へ持ち越さないため)
(5)次のプロジェクトの準備作業が並行して始まってしまう
(6)重要な課題があっても,中途半端な状況になるため手を付けられない
(7)新しい着任先に,質問の電話が何回もかかってくる

◆前任者から自分に引き継がれるとき

(I)前任者が離任する3日前に,突然,後任者として自分が指名された
(II)引き継いだ業務に関するドキュメントが分からない
(III)単純に,作業が2倍になる(引き継ぐ余力がない)
(IV)前任者が引き継ぎ期間中に休暇をとり,十分な引き継ぎができない
(V)前任者が,いい加減な引継をする
(VI)離任が決まった時から,重要な課題に全く手が付けられていない
(VII)離任後,前任者に聞きたいことがあっても連絡がとれない

 このように,引き継ぐ方(後任者),引き継がれる方(先任者)の困った経験を記載しましたが,ここで皆さん,何かに気付かれたでしょうか。そうです,上記の(1)と(I),(2)と(II)は表裏の関係にあるのです(それ以降も同様です)。引き継ぐ方の視点からすれば「引き継がれる方(前任者)が悪い」と見えてしまいますが,逆から見れば「引き継ぐ方(後任者)が悪い」となります。

 さて,ここで皆さんに質問です。これらの引き継ぎに関しての根本的な問題はどこにあるのでしょうか?