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フランスの携帯市場は,EU(欧州連合)諸国の中では事業者数が3社と比較的少なく普及率は最低レベル。そのフランスで第4の3G(第3世代携帯電話)免許入札が開始され,新たな3G携帯事業者が誕生する見通しである。同国での第4の3G免許付与に向けた動きや,新規参入による市場活性化の可能性について解説する。

(日経コミュニケーション編集部)

松本 祐一/情報通信総合研究所 研究員

 2009年1月12日,フランソワ・フィヨン首相は,2.1GHz帯の3G免許付与にかかわる戦略を公表した。新規事業者向けの特別枠を設けるか否かということが大きな争点となっていたが,同首相はより競争的な市場を生み出すべく一部の帯域幅を新規事業者に優先的に割り当てる方針を明らかにした。

 2.1GHz帯の3G免許は,オレンジ(フランス・テレコム),SFR,ブイグ・テレコムが取得済みで,残る15MHz帯域幅が今回の付与対象となる(図1)。

図1●2.1GHz帯における3G免許付与状況
図1●2.1GHz帯における3G免許付与状況
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新事業者の誕生に既存事業者が反発

 今回,この15MHz帯域幅を5MHz単位で切り分け,三つの免許が入札にかけられる。手続きは2期に分けられ,まず新規事業者向け1免許の手続きを行い,その後,新規・既存を問わず全事業者を対象とする2免許の付与を実施する予定である。

 フランスの規制当局であるARCEP(アルセップ,仏電子通信・郵便規制機関)は2009年3月,フィヨン首相の戦略に沿って第4の3G免許付与にかかわる条件案を取りまとめ,既に政府の審議へ回している。免許付与事業者の決定方法には,これまでと同様の比較審査方式が採用され,免許料は2億600万ユーロ(約274億円)に定められた。

 本案では申込書類の提出期限を2009年6月末までとしており,当初,政府は速やかに承認を行った後,官報公示により入札手続を開始し,2009年夏にも第4の3G携帯事業者が誕生する見通しであった。しかし,第4の3G携帯事業者の誕生に反対する既存事業者から圧力がかかり,政府は免許付与条件の見直しを余儀なくされ,早くもスケジュールに遅れが生じている。

 既存事業者は,今回の免許料が不当に安く設定された場合には法廷で争うと警告した。このため政府は,既に最高行政裁判所の機能を持つ国務院の承認を得ているにもかかわらず,2億600万ユーロの免許料の妥当性について客観的に検証せざるを得ない状況に追い込まれた。こうした動きを受け,経済・産業・雇用省は,国家資産価値の評価を行う委員会に対し,この免許料の適正さについて2009年6月15日までに明確に精査するよう命じた。

新事業者の決定は2010年の可能性

 政府は,同委員会の審査完了を経て2009年夏に入札を開始する予定としており,第4の3G携帯事業者の決定は2010年にずれ込む可能性が高い。

 現在,この第4の3G免許獲得に強い意欲を示しているのは,同国のブロードバンド・固定通信事業者のイリヤッドだ。また,同国で4番目の加入者数を持つMVNO(仮想移動体通信事業者)のバージン・モバイルも,入札を狙っていると一部で報じられている。

 第4の3G免許取得者に課せられる重要な義務は,既存事業者と同様,カバレッジの確保である。今回の免許付与では2年以内に25%,8年以内に80%の人口カバー率達成が義務として盛り込まれている。また,比較審査の九つの選考基準の中にはMVNOの受け入れに関する条件が掲げられている。当局は新たなMVNOの誕生を促進し,競争市場の創出に相乗効果を生み出すことも狙っていると思われる。

 なお,第4の3G免許取得事業者に対する優遇措置も採られ,900MHz帯の使用,人口カバー率が一定レベルに達した時点における既存事業者1社とのGSM網ローミング契約締結などが認められる。