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導入に前向きでなかった顧客の心をとらえたのは、1回きりのデモンストレーションだった。競合他社を出し抜くべく、足しげく通ってデモにこぎつけた。営業担当者の粘りが、受注を呼び込んだ。

 「森田副理事長は気に入ってくれるだろうか」。2008年4月24日、沖電気カスタマ アドテック(OCA)ソリューションビジネス本部 関西営業部 北陸営業課の担当係長、山田信将は、不安な気持ちで、客先の北陸労働金庫(北陸労金)に向かった。山田が不安を抱いていたのは、沖電気工業のテレビ会議システム「Visual Nexus」のデモンストレーションである。

 だがデモが始まるや否や、山田の懸念は吹き飛んだ。北陸労金の副理事長である森田則夫が、自ら会議用の端末を操作し始めてしまうほど、テレビ会議システムに強い関心を示したからだ。

 さらに、テレビ会議システムの導入プロジェクトを担当した、北陸労金の経営企画部次長である指崎泰利を含め、デモに参加した他の関係者の反応もよかった。「映像の動きがぎこちなかったり、応答に時間差が生じたりすると思い込んでいた。だが、実際に見てみると違和感なく使えることが分かった」という意見がほとんどだった。

ATMで開拓した顧客に売り込む

 山田が所属するソリューションビジネス本部がVisual Nexusの販売を開始したのは、2007年6月のことである。同製品を成長領域の商材と位置付けて、全国の営業担当者に売り込みの大号令をかけていた。

 ATM(現金自動預け払い機)の営業で山田自身が新規開拓した北陸労金に、Visual Nexusを紹介しようと考えたのが、商談のきっかけである()。

表●北陸労働金庫(北陸労金)が沖電気カスタマ アドテック(OCA)に発注するまでの経緯
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表●北陸労働金庫(北陸労金)が沖電気カスタマ アドテック(OCA)に発注するまでの経緯

 2月下旬、山田が北陸労金の指崎を訪問すると、指崎が「商品販売と相談窓口でテレビ会議システムの活用を検討している」と明かした。しかも、既存の取引先ベンダーであるA社とB社、さらにWeb会議システムを開発するC社から資料を取り寄せていたことも分かった。

 北陸労金では、2008年4月の新年度から始まる3カ年の中期経営計画で店舗政策を見直し、取り扱う金融商品を絞り込んだ小規模な専門店舗の開設を計画していた。

 この専門店舗にテレビ会議の専用端末または、カメラやマイク、スピーカーを接続したパソコンを設置しておく。来店した顧客が端末を操作するだけで、本部の職員と会話して、金融商品の案内を受けることができる仕組みを検討していたのである。

通い詰めて顧客を動かす

 既に競合他社から資料を取り寄せている状況を明かされた山田は焦った。「まずは製品に触れてもらいたい。デモを見てもらえないか」と指崎に願い出た。

 どのベンダーも高画質/高音質をうたい文句にして、テレビ会議システムを売り出していたが、山田はVisual Nexusに自信があった。「テレビ会議システムもATMと同じ。商品の良さを伝えるには、まずは体感してもらうのが手っ取り早い」と、山田は考えたのだ。

 だが、指崎はうなずかなかった。2008年度はテレビ会議システムの導入の検討にとどめ、デモはまだ先と考えていたからである。

 デモを指崎が見たくなるようにと、山田は2月末から3月にかけて、あの手この手でアプローチし始めた。例えば、沖電気工業の金融システム本部の営業担当者を同行し、テレビ会議システムを活用した店舗戦略を提案した。

 テレビ会議システムの導入効果をアピールすべく、社内勉強会で知った全国農業共同組合(JA)の事例を調査。JAがテレビ会議システムの導入で得たコスト削減効果の資料を持って訪問もした。

 こうして週に1度の頻度で指崎を訪問し、その都度デモの実施を打診した。そして4月2日、ついに指崎が「見るだけ、見てみよう」と言った。山田の粘りが指崎を動かしたのだ。