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 RFPの業務要求を実際に表現するアウトプットには,以下のようなものがある。

[必須のもの]
・現行システム概念図
・現行業務フロー(現行システムがない新規の場合は手作業フロー)
・現行業務概要
・業務基本要求(現在当たり前にできている基本機能)
・ユーザー要望(現行システムへの要望)
・データ情報
・現行システムの入出力物(特に帳票類)

[あると良いもの]
・新業務フロー
・特徴的な処理の説明図
・現行システムの画面
・新システムの画面イメージ

 上記に挙げたものの中から,今回は業務フローについて説明しよう。RFPで必須の業務フローは,現行業務フローである。現在業務がどのように行われ,システムがどのように業務に関わっているのか,をできる限り正確にベンダーに伝える必要がある。現行システムを担当しているベンダーはそれを熟知しているはずだが,競合となる他の新規ベンダーは当然ことながら知らない。したがって,それらを正確に伝える必要がある。

 では,現行業務フローはどのように作成すればよいか。ポイントは「パターン化してまとめる」ことである。まず,業務フローをあまり細かく分けるのは考えものだ。小さな分岐までを別々の処理として捉え,そのすべてを別の紙に業務フローとして書いてしまうと,枚数が極端に増えてしまい,作成負荷が著しく増大する。

 さらに,ベンダーもRFPの段階ではあまり細かい情報までは咀嚼(そしゃく)しきれないことが多く,かえって混乱したり,あるいはシステム規模を過大にとらえてしまったりと弊害もある。「詳細よりも網羅性」を意識して,「新規登録処理」「入金処理」といった業務パターンに分割して整理できれば,そのパターン化した業務を使ってフローを作成するのがよいだろう。

 また,新業務フローがなぜ必須ではないのかと疑問に感じるかもしれない。RFP作成の段階で,新しくやりたいことが決まっていて,業務フローに落とせるほど具体化していれば,もちろん,新業務フローを提示すべきであるし,提示するメリットは大きい。しかし実際には,この段階では具体的なフローまでは決まっていないことが多い。新業務フローをRFPに載せようと,詳細が詰め切れていないのに無理して中途半端なフロー図を作成することはやめるべきである。間違った情報をベンダーに与えてしまい,後々のもめ事の原因となる可能性があるからだ。

 RFPの長所であり逆に怖いところでもあるが,「RFPにこう書いてあった」というのは証拠としてずっと先まで残るのである。また,業務パッケージ・ソフトの利用を前提に検討している場合などは,詳細な新業務フローをいくら書いても,あまり意味がない。「パッケージでこの新業務フローの通りに寸分たがわずやれと言われてもできません」とベンダーが逃げてしまうこともある。新業務の詳細がはっきりしていない場合やパッケージを利用する場合は,要件定義の段階でベンダーのSEと一緒に新業務フローを作成すると割り切ってしまった方がよいだろう。

発注者ビューガイドラインのルールがおすすめ

 業務フローの書き方は,ベンダーやSE個人によって流儀がいろいろとあるようだ。しかし,ユーザーからすれば,そうした「会社流儀」「個人流儀」はあまり歓迎すべきことではない。特に業務フローは情報システム部門だけでなく,エンドユーザーもかかわるべきアウトプットである。例えば,SE視点でデータベースが主役のように書かれている業務フローは,エンドユーザーからすれば「よく分からない難しい資料」になってしまう。そういう先入観を持たれると,せっかくの業務フローにきちんと目を通してもらえないといった事態を招く。

 おすすめは,IPA(情報処理推進機構)が公開している「発注者ビューガイドライン」の「システム化業務フロー」のルールに則って作成することである(図4)。これはその名の通り,発注者(エンドユーザー)の視点からの業務フローの書き方になっているので,エンドユーザーにも分かりやすい。

図4●業務フローのサンプル(発注者ビューガイドラインを参考にした書き方)
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 本来業務フローは,情報システム部門ではなくエンドユーザーに書いてもらうのが理想であり,このルールであれば書くことができるというエンドユーザーも多くいる。実は筆者も,以前は個人流儀で業務フローを作成していたが,ある案件で顧客から「なぜIPAがこのようなガイドラインを出しているのに,使わないのか」と質問され,返答に詰まった経験がある。顧客に教わることも多いのである。

永井 昭弘(ながい あきひろ)
1963年東京都出身。イントリーグ代表取締役社長兼CEO,NPO法人全国異業種グループネットワークフォーラム(INF)副理事長。日本IBMの金融担当SEを経て,ベンチャー系ITコンサルのイントリーグに参画,96年社長に就任。多数のIT案件のコーディネーションおよびコンサルティング,RFP作成支援などを手掛ける。著書に「RFP&提案書完全マニュアル」(日経BP社)。