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6月に開かれた30%委員会。この日は店舗オペレーションの見直しを議論した。真ん中に座る社長の松井が担当者に、コスト削減項目を実行に移すための具体策を詰めるように指示

 とはいえ、松井の肝入りで始まった30%委員会は、最初の半年で90回も会合を開きながら、成果を出せずにいた。松井は逆に悪化した印象さえ受けた。というのも、「自社の常識の範囲内では画期的なアイデアが出てこない」。自力のコスト削減には限界があることを松井は改めて悟った。

 そこで2004年末、2002年5月から社外取締役を務めるしまむら会長の藤原秀次郎に相談。ローコスト経営に定評があるしまむらの徹底研究を始めた。ここから30%委員会は一気に加速する。良品計画としまむらは役員や部長が自由に行き来して意見交換できる間柄になり、その中から店舗での荷受けや品出しを楽にする物流センターからの納品方法やトラックへの在庫の積み方、本部スタッフを25%減らして新店要員に配置転換しながら店舗間のコミュニケーションを高める「ブロック店長」制度、店舗の監査項目を簡素化する代わりに監査の生産性を4倍にすることなどを学んだ。

 象徴的な改革がある。商品タグ(値札)の刷新だ。ある日、松井はしまむらの幹部から、良品計画にはタグの種類が多過ぎるのではないかと指摘された。しまむらにはタグが3種類しかないが、良品計画には203種類もある。衣料品中心のしまむらと生活雑貨や食品まで手がける良品計画では単純比較はできないが、それでも200種類も必要ないはずだ。しまむら幹部の目にはそう映った。

取締役生活雑貨部長の加藤隆志は商品タグ(値札)の種類を半減し、年間2億5000万円のコスト削減を見込む

 早速、松井は取締役生活雑貨部長の加藤隆志にタグの見直しを指示し、30%委員会の検討課題に加えた。2000年に西友の衣料品部門から転じた加藤はユニクロを立て直した大久保とともに、不良在庫の山になっていた良品計画の衣料品部門に入り、生産計画や在庫管理の体制を刷新して廃棄ロスを解消。粗利益を押し上げる体質に生まれ変わらせた。その実績を買われ、松井は30%委員会を発足する直前に、加藤を良品計画の中核である生活雑貨部門の責任者に抜擢した。加藤は着任するなり、生活雑貨と衣料品の社員をシャッフルして配置転換し、現場の意識を変えた。

 その加藤でもタグの見直しには驚きを隠せなかった。良品計画は商品の説明文を書き添えた独自のタグに強いこだわりを持ち、「タグに手を付けるのはアンタッチャブルという暗黙の了解があった」。そのせいで大きさも形も異なる様々なタグがあふれ、コスト高の要因になっていた。しかもタグのメーカーは国内外で26社に膨らんでいた。

 松井の後ろ盾を得た加藤はタグの種類を半減し、メーカーも集約すると宣言。この5月には98種類まで減らし、メーカーは公募の末に2社に絞って大量発注する代わりに単価を下げた。これで年間2億5000万円の削減が可能になった。

 タグを集約する過程では、商品開発部門から反発があった。彼らは商品に合ったサイズとデザインのタグを作りたがる。メーカーを2社に絞れば、タグの供給が滞ると心配した。そこで加藤は生活雑貨と衣料品、食品の各責任者を集めて、タグは大が小を兼ねるのか、小が大を兼ねるのかといった議論を一緒に進めた。メーカーの選定は単価だけでなく、中国や東南アジアでの工場の所在なども勘案に入れて安定供給を話し合った。