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 動画配信市場の今後を占ううえで,重要な要素は,動画配信のインフラをどれだけ効率化し,コストを抑えるかだ。効率化すればするほど事業リスクは下がる。特に携帯電話では,通信品質を高めるためにHSPAやLTEによる無線区間の広帯域化が必須だ。さらに,効率的に多くのユーザーに動画を配信する仕組みも取り入れなければならない。

 実は携帯電話事業者は,今後を見据えて,新たなインフラを作ることまで考えている。総務省で議論が進む携帯端末向けマルチメディア放送への参入意向を示しているからだ。マルチメディア放送が実現すれば,通信用ネットワークを動画配信に併用する仕組みよりも効率的にネットワークを運用できるうえ,大容量の動画を同時に多数のユーザーに配信する道が開けてくる。

電波利用効率が悪いユニキャスト

図1●携帯端末向けの動画配信手段の種類<br>通信インフラ上でのユニキャスト配信が一般的だが,より効率的な配信が可能な通信インフラでのマルチキャスト,放送インフラを使ったブロードキャストといった配信手段がある。
図1●携帯端末向けの動画配信手段の種類
通信インフラ上でのユニキャスト配信が一般的だが,より効率的な配信が可能な通信インフラでのマルチキャスト,放送インフラを使ったブロードキャストといった配信手段がある。
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 携帯電話を対象とした動画配信方法は大別して3種類考えられる。(1)既存のデータ通信用のネットワークを使ったユニキャスト,(2)マルチキャスト,そして(3)放送である(図1)。

 携帯電話事業者の動画配信方法で最も一般的なのはユニキャスト配信である。NTTドコモの「BeeTV」やソフトバンクモバイルの「選べるかんたん動画」などが採用している。端末と配信側が1対1で通信し,端末側の要求に応じて動画を配信する仕組みだ。

 ユニキャストには既存の通信インフラを活用してサービスを展開できるメリットがある。一方で,接続する端末台数分の帯域が必要になる。このため同時に多数のユーザーが動画を利用すると,無線やサーバーのリソースが足りなくなるなど,配信が困難になる可能性がある。

 ソフトバンクモバイルの選べるかんたん動画は,こうした利用の集中を避けるために,ユーザーの動画利用のトリガーとなるメール配信の時間帯をいくつかに分散させる工夫を施している。

無線通信でマルチキャスト

 マルチキャスト配信は,ユニキャストよりも効率的な配信手段である。KDDIの動画を含むプッシュ型コンテンツ配信サービス「EZチャンネルプラス」や「EZニュースEX」では,このマルチキャストを採用している。

 具体的には,下りの通信容量の一部をマルチキャスト用に使い,多数のユーザーに対して同一の動画を同時に配信する。一つの帯域で複数の端末に配信できるため,ユニキャストのように端末台数分の帯域を使う必要はない。ニュースなど,多くのユーザーのニーズが見込めるコンテンツの配信に向く方式である。

 3GPPではMBMS3GPP2ではBCMCSという名称で標準化が完了しており,通信事業者は既存インフラのソフトウエアを更新するだけでマルチキャストを実現できる。そもそも無線通信では,基地局のカバーエリア内にあるすべての端末に一様に電波が届くため,物理的にはマルチキャストは実現できている。通常は1対1通信にするために,あえてコントロール情報を付加して他の端末が情報を受信できないようにしている。これを外せば,マルチキャスト配信が可能になる。

 ただ,すべての電波をマルチキャスト動画配信には使えない。トータルの通信容量の一部をマルチキャスト用に割り当てつつ,それ以外の通信用の帯域も確保する必要がある。ユニキャストに比べれば効率的な配信が可能になるものの,「大容量の配信をしようとすると限界がある」(クアルコム ジャパンの前田修作事業戦略部長)。