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東京の青海にある日本科学未来館
東京の青海にある日本科学未来館
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 東京都江東区青海にある日本科学未来館に行ってきた。前々から見てみたい展示があったからだ。それは,「インターネット物理モデル」と呼ばれるものである。夏休みに入って暇そうにしていた息子(4歳)を連れて行った。

 日本科学未来館は,東京臨海新交通臨海線(ゆりかもめ)のテレコムセンター駅を降りて徒歩5分程度のところにある。館内に入って3階の「情報科学技術と社会」という常設展示に足を運ぶと,一見すると芸術作品のようなステンレス製の美しい物体が目に入ってくる。これが「インターネット物理モデル」だ。

玉の流れでインターネットのしくみを表現

「インターネット物理モデル」の展示
「インターネット物理モデル」の展示
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ターミナル(端末)を操作してデータ(白と黒の玉)を送る
ターミナル(端末)を操作してデータ(白と黒の玉)を送る
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「ルーター」の役割を果たす機械。玉の白黒を読み取って転送先を判断する
「ルーター」の役割を果たす機械。玉の白黒を読み取って転送先を判断する
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送ったデータが受信器に表示される
送ったデータが受信器に表示される
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 インターネット物理モデルは,ステンレス製のタワー状の機械が相互にレールでつながっており,その周囲に人間が操作する操作卓(ターミナル)がある構成になっている。「このタワーがルーターで,ターミナルが端末か!」と,ボルテージが上がる。この接続構成は,1969年12月当時のARPANET(米国防総省が構築したパケット交換網でインターネットの母体)の接続様式を模したものだという。

 この展示が面白いのは,実際にターミナルを操作できるところである。ターミナルでは,データのあて先と内容を決める。あて先は五つあり,あて先別に8ビットが決まっている。データの内容は,8ビットで表された1文字分の文字コードだ。つまり,あて先の8ビットが「IPヘッダー」で,内容を示す残りの8ビットが「データ」,これら全16ビットが「IPパケット」というわけだ。

 IPパケットを構成するビットは,プラスチック製の白と黒の玉で表現している。白玉が「0」,黒玉が「1」である。ターミナル画面に表示された通りに白と黒の玉をセットしてボタンを押すと,ターミナルから伸びているレールを伝って最寄りのタワー(ルーター)に玉が転がっていく。ボタンを押すときは,メーラーの送信ボタンをクリックするときと同じように,ちょっとドキドキする。

 16個のボールはレールを伝わり,ガシャガシャとルーターの中に吸い込まれていく。このガシャガシャという音が「トラフィックが問題なく運ばれている」という気持ちにさせてくれて心地良い。ルーターには赤外線センサーで玉の白黒を判定するアドレス判定のしくみが備わっており,これで玉の転送先を判断する。こうしてルーターからルーターへと玉が運ばれる「IPルーティング」の様子を目で追っていくことができるわけだ。

 送り出した16個の玉は最終的に,目的地のターミナルまで運ばれる。目的地のターミナルには受信器と呼ばれる表示板があり,ここに文字データとして送られた8個の玉が到着する。同時に,対応する文字がLEDで表示される。これで,送った文字が無事に指定のあて先の端末まで届いたことがわかる。以上が,インターネット物理モデルの動作だ。

インターネットの“中核”を抽出

 インターネットの中核をなすプロトコルはTCP/IPである。この展示を観察していると,データをあて先のコンピュータまで届ける「IP」の要素を抽出したものだということがわかってくる。「途中で玉が落ちたら?」などと考えると,応答確認や再送制御を担当するTCPの役割がわかってくるし,「ルーターが1台動かなくなったら?」と考えると,ルーター同士で経路情報を交換する「ダイナミック・ルーティング」の必要性がわかってくる。単に「見て楽しい」というだけでなく,インターネットのしくみを勉強するための教材としても有用だと感じた。

 筆者はインターネット物理モデルを見て,とても興奮した。「きっと息子も大興奮しているに違いない」と思いきや,これまで見たことのない展示物に少し驚いた様子。そこで,一緒にやってみようと呼びかけてみた。

 説明員の丁寧な説明を受けつつ,一人で白と黒の玉をセットする息子。やはり自分の手を動かすのは楽しいらしく,その顔は真剣そのものだ。セットし終わったら,恐るおそる送信ボタンを押す。と同時に転がる玉を追いかけて,目的地のターミナルまでダッシュ。自分が送った玉が流れてきたときには「僕の玉が来た!」となかなかご満悦の様子だった。

 インターネットのしくみを模しているというところまではまだ理解できていないようだが,楽しめたようなのでいいだろう。勉強は楽しいことが大切である。子供たちは夏休み。「お父さん,どこか遊びに連れて行って!」と言われたときのネタになれば幸いである。