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by Gartner
クラウディオ・ダ・ロルド VP兼最上級アナリスト
海老名 剛 リサーチシニアアナリスト

 厳しい経済状況が続く中、ITサービス事業者は市場規模の縮小や、利益率の減少といった現実に直面している。ITサービスの利用企業は、事業者の現状をよく理解し、彼らがビジネス上のリスクを回避するためにどういった取り組みをしているのか、改めて調査すべきだ。調査を通じて、その事業者が本当に自社に適した相手なのか判断しなければならない。

 利用企業がITコスト削減や業績の改善、システムの柔軟性確保に専念する2009~10年は、アウトソーシングを含むITサービス市場にとって、特に厳しい時期になる。ガートナーは、09年に世界のITサービス市場が前年比1.7%減少すると推定している。しかもこの予想は今後、下振れする可能性もある。

 ITサービス事業者が現在抱える課題は様々だ。複数年のアウトソーシング契約の見直し機運は高まっているし、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)やクラウドコンピューティングに代表される新しいアプリケーション・デリバリ・モデルも開発しなくてはならない。当然ながら価格の引き下げ要求もある。

 ITインフラのアウトソーシング料金は、10年までに5~20%値下がりする見込みだ。アプリケーションに関するシステムインテグレーション・サービスも同様で、インドのサービス料金は1ケタ台の値下がり、中国のサービス料金は10~20%の値下がりとなるだろう。欧州や米国でのサービス料金の引き下げ幅はこれらの中間となる。コンサルティングやシステムインテグレーションなどを含むサービスやアウトソーシングに対する企業の支出は、09年には3~5%減少する見通しだ。

 利用企業にとって、これら料金引き下げの機運は明るい話題である。しかし、市場全体にとっては大きなリスクともなり得る。なぜならアウトソーシング料金が10%下がると、多くの事業者は採算割れを引き起こし、最悪の場合倒産する恐れがあるからだ。

 景気後退期を生き抜くには、ITサービス事業者はコストを削減し利益を死守するだけでなく、市場変動に対応できる柔軟性を保持しなければならない。既存事業の防衛に腐心し、コスト削減しか眼中にない事業者は苦戦を強いられるだろう。保守的な事業者ほど、自分たちがこれまでやってきたビジネスモデルに固執する傾向がある。その結果、売り上げは減少し利益率も目減りする。リスクをとってビジネスモデルを変えようとしないからだ。事業者は、新しいサービス・デリバリ・モデルの開発とオンデマンド型サービスの提供のために投資を行い、ITサービスを革新する必要がある。景気後退期こそが、事業者の未来を決定づける。

 先進的な一部の事業者は、コスト削減だけでなく、スピンオフや提携といった新しいアプローチを採用することで、事業の柔軟性を生み出そうとしている。市場が興味を示す新しいサービスに対して積極的に投資を行った事業者が、未来のリーダーとなる。

 ガートナーはITサービスの利用企業に対して、以下の視点で事業者を査定することを推奨する。

  • 少なくとも6カ月ごとに、事業者の新しいビジネス分野への投資状況と、オンデマンド型サービスの提供能力を調査する。
  • 6カ月ごとを目安に、事業者の業績や財務状況を再評価し、併せてリスク評価も実施する。
  • 少なくとも12カ月ごとに、事業者のアウトソーシング戦略が自社の業務に適合しているかを再評価し、より有利な事業者や提案がないかを調査する。

 不況期には、利用企業とITサービス事業者のうち、いずれかが負ければ、残りの一方も負けとなる。「Win-Win」の関係こそが、両者の間に今、求められている。