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 今回は,IT業界でも大きな課題になっているプロジェクト・マネジャーの育成と,プロジェクトを計画通り遂行できるプロジェクトマネジメント体制についてお話しましょう。

 エンジニアリング会社は,実際の機器の製作は外部のベンダーに発注しますし,施工工事は,建設工事会社に発注します。では何がエンジニアリング会社の“売り”かというと,それは(1)顧客と話し合いながら詳細設計を行い,それを設計図と仕様書にまとめてRFPを作成し,ベンダーを選定して必要な機材を製作する「エンジニアリング能力」と,(2)全体をうまくリードして期限内,予算内に求められる品質のものを作り上げる「プロジェクトマネジメント能力」です。

 特にプロジェクトマネジメント能力を維持向上することが,“競争力の源泉”として,非常に重要視されています。このため,優秀なプロジェクト・マネジャーの確保は,会社としての最重要課題の一つです。

PMを補佐しながら,プロジェクトマネジメントのスキルを磨く

 では,エンジニアリング会社はどのようにして,優秀なプロジェクト・マネジャーを育てているのでしょうか。その秘密は,「プロジェクト・エンジニア」という職種にあります。

 プロジェクト・エンジニアは,プロジェクトマネジメント専門にキャリアを積む将来の“プロジェクト・マネジャー候補”のことです。その役割は,プロジェクト・マネジャーを補佐することです。プロジェクト・マネジャーを補佐しながら,プロジェクトマネジメントの専門スキルを磨くわけです。

 プロジェクト・エンジニアは,設計部門や工事部門ではなく,プロジェクトマネジメントの専門職種で構成される「プロジェクト本部」に所属します。もちろんプロジェクト・マネジャーも,プロジェクト本部に所属しています。

 このように,プロジェクトマネジメントの専門職種が集まった部門があることも,エンジニアリング会社の特徴です。プロジェクト本部の本部長は,プロジェクトマネジメントの専門職種を束ねるだけではなく,各プロジェクトがスケジュールや予算の面から順調に進んでいるかどうかを監視する役目を負っています。

 では,どんな人がプロジェクト・エンジニアになるのでしょうか。実は,入社してすぐにプロジェクト・エンジニアになる人はまれです。通常は,設計部門や工事部門で5年から10年の経験を積んだエンジニアが,本人の適正と希望を勘案して,プロジェクト本部に異動し,プロジェクト・エンジニアとなります。

 プロジェクト・エンジニアになる前に設計部門や工事部門で経験を積むのは,(1)あまり若すぎると自分より経験の長い設計メンバーなどを束ねたマネジメントができない,(2)設計や建設現場の業務を理解したうえでマネジメントすべき---という理由からです。

 プロジェクト本部に異動した時点で,そのエンジニアは設計の専門家としてのキャリアから,プロジェクトマネジメントの専門家としてのキャリアへ,職種を変えることになります。異動しない人は,そのまま,設計部門でキャリアを積んでいきます。このキャリアパスを見てもわかるように,エンジニアリング会社では,設計のスキルとプロジェクトマネジメントのスキルは,全く違うものと認識されています。

 IT業界では,エンジニアリング会社の「プロジェクト・エンジニア」に当たる職種はありません。通常は,SEがまずプレイングマネジャー的に小規模な開発のリーダーを務め,徐々に大規模な開発のマネジャーを任されるようになります。しかし,SEとプロジェクト・マネジャーの間の境界はあいまいです。

 優秀なプロジェクト・マネジャーを育てるためには,IT業界でも,設計とプロジェクトマネジメントのスキルを明確に区別するべきです。そのうえで,若手エンジニアからプロジェクト・マネジャー候補を選抜し,プロジェクトマネジメント専門のキャリアを積む仕組みが必要ではないでしょうか。