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 3次元(3D)映像を文字通り立体に見えるように映し出すディスプレイの製品化が盛んになってきた。従来の3Dブームとの最大の違いは、3D映画が米国を中心に高い興行成績を示し始めたことである。「3D映画の売り上げは同じ映画の2次元版の3.6倍」(グラフィックス処理LSI大手の米エヌビディア)という調査結果もあるようだ。より自然な映像にするためのいくつかの技術革新の進行と、ハリウッド映画監督たちの新しい表現を模索するタイミングが一致し、大作ほど3Dになる流れになっている。

 しかも、新作ごとに3D映像の品質が高まってきている。従来、課題だった色の不自然さはほぼ解決し、目の疲れもほとんどなくなった。映画の主人公が空中を飛んでいるシーンでは、視聴者も同様に空を飛んでいるような「没入感」が楽しめる。

映画の勢いが家庭に波及か

 映画の多くが3D化すれば、家庭向けの動画プレーヤーやディスプレイを3D映像に対応させる動機が高まる。既に、韓国のサムスン電子やLG電子が2008年までに米国などで3D映像対応ディスプレイを発売。2009年はパナソニックや三菱電機なども米国市場で韓国勢に続く見通しになっている。

 ディスプレイ市場の調査会社である韓国ディスプレイバンクは2008年10月、「3D対応ディスプレイの出荷額が2015年にはディスプレイ全体の9.2%を占める」という予測を発表した。

 現在の3D映画はすべて専用のメガネをかけることで実現している。メガネを使うことを前提にすれば、3D映像への対応は家庭用テレビやHDDレコーダーでもそれほど難しくはない。

球場のミニチュアを再現へ

 こうした動きを背景に、実現はやや先になりそうなものの、メガネなしの3Dディスプレイの開発も盛んになってきている。日米欧のメーカーや研究機関が開発でしのぎを削っており、中には既存のディスプレイとは全く違う技術を用いたり、異なる映像の見せ方を採用したりするものもある。

NICTが開発中のサイコロ型3Dディスプレイの試作品<br>6面にレンチキュラー・レンズ付きの液晶パネルが張られている。見る角度を変えると、あたかも中の映像が実物であるかのように、映像の側面が見える
NICTが開発中のサイコロ型3Dディスプレイの試作品
6面にレンチキュラー・レンズ付きの液晶パネルが張られている。見る角度を変えると、あたかも中の映像が実物であるかのように、映像の側面が見える
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 例えば、独シーリアルテクノロジーズはホログラフィーによる3Dディスプレイを2010年に発売する計画だ。同社の技術は、ディスプレイを見つめる人の目の動きを追跡し、左目と右目に異なる映像を見せる。しかも、目や頭の位置を動かすと、それに合わせて被写体の側面の映像が目に映し出される。もちろん、隣にいる人には、実際の被写体を直接見る場合と同様に、別の映像が見えているのである。こうした技術の実現には大量の演算を超高速で実行する必要があるが、スーパーコンピューター並のグラフィックス処理LSIを利用することで実現した。「次の試作品ではディスプレイの前の6~8人に同時に異なる3D映像を見せられる」(シーリアテクノロジーズ)という。

 通信情報研究機構(NICT)は、サイコロ型ディスプレイの開発を進めている。これは、映像をディスプレイから飛び出させるのではなく、ディスプレイの奥に映像を映し出す技術を利用する。あたかも透明な水晶玉の中に立体映像が浮かんでいるように見えるようにするのが目標だ。これが実現すれば、例えば野球やサッカーの試合を、ミニチュアの球場を覗き込むように、しかもさまざまな角度から観戦することも可能になる。