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 自動車を“走るセンサー”に見立てて、渋滞状況や天候の変化、危険箇所などの情報を集める仕組み。人工衛星や監視カメラなどを補う情報収集インフラとして注目が集まっている。複数の自動車が協調して「探索する(プローブ)」ことから、プローブ情報ネットワークと呼ぶ。

 自動車には速度計やブレーキ、ワイパーやエアコンなどを制御する様々なセンサーが備わっている。これらとカーナビゲーションシステム、携帯電話の通信機能を組み合わることで、「いつ、どこが、どのような状況にあるのか」を把握できる。

 個々の自動車から集められる情報は少ないが、数十万台からの情報を集約すれば人工衛星よりも高精度な情報を広い範囲で収集できる。自動車をセンサーとして使うため、新たな設備投資が不要という利点もある。

災害や犯罪の危険を通知

 プローブ情報ネットワークの効果が初めて実証されたのは、2007年7月に発生した新潟県中越沖地震だ。道路が至るところで寸断され、救援物資をスムーズに運び込めない状況を救った。一般のドライバーから集めた走行情報を分析し、地震の翌日には道路の寸断状況を把握。首都圏から最短時間で救援物資を運ぶルートを見つけ出すことができた。

 現在は渋滞回避情報の提供などドライバー向けサービスが中心だが、地域住民に災害や事故の危険を通知する情報サービス基盤としても活用できる。例えば、ワイパーの動作状況を基に降雨範囲や雨の強さを特定できれば、集中豪雨が迫っていることを地域住民に知らせられる。日産自動車は、見通しの悪い路地での事故を防止するシステムを開発している。路地に接近中の歩行者の携帯電話から収集した位置情報と自動車の位置・速度情報を基に、事故の可能性を予測する。危険を察知したときは、ドライバーに注意を促す。

 ドライバー向けのサービスも拡充している。ホンダは全国の警察と協力し、車上荒らしや盗難などが多発する危険地域を予測してドライバーに通知するサービスを始めた。 

 現在は、自動車メーカーが個別にプローブ情報ネットワークを構築しているが、集めた情報の互換性はない。この課題を解消し、社会インフラとして活用する動きも本格化し始めた。

 国土交通省は2012年度をメドにプローブ情報ネットワークを官民で相互利用するための情報基盤構築の検討を始めている。トヨタ自動車とホンダ、日産の大手3社は、プローブ情報ネットワークの標準化や普及促進策を検討するワーキンググループを発足させた。

 国内では現在、約7500万台の自動車が走っている。このうち走るセンサーとして情報を収集できる自動車は2008年末時点で約100万台。この台数が増えるにつれ、情報収集インフラとしての威力が増す。

プローブ情報ネットワークの仕組み
プローブ情報ネットワークの仕組み