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 人のあらゆる行動履歴を記録する情報システムがライフログだ。コンピューターの「ログ(操作履歴)」を取得するように、パソコンでウェブサイトを閲覧したり、自動車や電車で移動したりといった人間の生活(ライフ)全体のログを記録。それを基にして、その人の行動パターンや好みを分析し、マーケティングなどに活用する。

 従来のワン・ツー・ワン・マーケティングでは、住所や年齢、購買履歴など限られた情報から顧客像を推測するにとどまっていた。生活全般の履歴を把握できれば、分析精度は格段に上がる。「いつも通る場所にあり、メニューにその人が好きそうな食べ物が載っているレストランを薦める」といったことも可能になる。

携帯GPSやICカードが起爆剤

 ライフログに詳しい野村総合研究所情報技術本部技術調査部の亀津敦主任研究員は「2009年はライフログ元年になる」と話す。GPS機能付き携帯電話やICカードが全国・全世代に浸透してきたからだ。ライフログの第1の収集経路はウェブサイトだ。「いつ、どんなページを見たか」といったログを集める。ただし、人は常時サイトを見ているわけではない。そこで第2の収集経路として携帯電話やICカードが重要になる。

 例えば交通系ICカードでは、自動改札機やバスの読み取り機などにタッチすれば、いつどこの駅から乗車してどこの駅で降りたかを記録できる。駅の売店で電子マネーを使った買い物をすれば、その記録も残る。

監視社会につながる恐れも

 福岡県の西日本鉄道は、2008年5月にICカード乗車券・電子マネーサービス「nimoca(ニモカ)」を導入したのと同時に、「nimoca顧客分析システム」を稼働させた。個人情報利用の承諾を得た人を対象に顧客情報を集め、分析している。「駅を利用しているのに、駅前のA店を利用している人は少ない」といった動向が分かる。この結果に基づいて、A店は駅利用者向けの販促を強化するなどの対策を打つことができる。

 企業だけでなく、消費者がライフログを活用して自らの情報を発信する動きも出てきている。

 ライフログの普及について、野村総研の亀津氏は次のように話す。「まずネット上のライフログの融合が始まる。次に現実の世界との融合へと進むが、これには少し時間がかかるかもしれない」。ライフログが進化しすぎると、個人の行動がすべて記録される“監視社会”につながる懸念がある。西鉄などの事業者は、保有するライフログを加盟店や本人以外に公開することには慎重である。

 ライフログは、いわば究極の個人情報だ。貴重な情報だけに、それらを扱う事業者の責任は重大である。一方で利用者側にも、自分の行動履歴を積極的に開示することでより良いサービスを受けようという姿勢がなければ、ライフログは浸透しないだろう。

日々の行動履歴を収集・集積するライフログ
日々の行動履歴を収集・集積するライフログ