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写真●芦屋広太氏
写真●芦屋広太氏
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 「人を動かす」技術は究極の仕事術---。教育コンサルタントの芦屋広太氏はこう強調する。人を動かす技術をまとめた新刊「人を動かす9の基礎力と27のエクササイズ」の著者である芦屋氏が,3回連続で人を動かす技術の重要性や習得するための注意点,さらに教育論まで語る。第1回は人を動かす大切さを中心に聞いた。(聞き手は,田中 淳=ITpro)

そもそも「人を動かす」ことがなぜ大切なのでしょうか。

 IT関連に限りませんが,ほとんどの仕事は一人ではできないものです。中でも,特にシステム開発は人を動かす必要のある仕事だと思います。なんといっても,ステークホルダーが多いし,それだけでなく,会社をまたがることが普通だからです。

 ITエンジニアやPM(プロジェクト・マネジャー)にとって,ここが辛いところです。客先を怒らせてはいけないし,自社の役職者,直属の上司にも配慮しなければならない。それだけでも大変なのに,メンバーの仕事にも気を使わなくてはいけません。

 ステークホルダー(利害関係者)との関係が少しでもおかしくなると,多くの場合はシステム開発がうまく進まなくなります。逆に,ステークホルダーとの関係を上手に保ち,さらに,彼ら・彼女らを自由自在に動かすことができれば,仕事はスムーズに進むものです。

そう思うようになったきっかけは,何だったのですか。

 システム統合プロジェクトを経験したことです。7社の共同プロジェクトで,私が所属する会社のシステムに6社のシステムを片寄せする形式でした。私はPMスタッフを務めました。

 当然,片寄せされる6社の課長や部長は「自社システムのこの機能を残せ」「こうカスタマイズしてくれ」と要求してきます。私はPMスタッフとして,6社の課長や部長相手に説得,交渉する必要がありました。人を動かす必要性とそのノウハウを学んだのはこのときです。

 プロジェクトが完了してから,人を動かすスキルセットの整理が必要と思うようになりました。それ以降,多くの事例を通じて現場での人の動かし方を記録し,学びました。10年前からは,部下や後輩にそれらのスキルセットを教えています。すると自分だけでなく,その人たちも仕事が非常に速く,うまく進むようになったのです。

 こうした経験から,「人を動かす力を身につければ,仕事をスムーズに,かつ確実に進めることができる」という確信をもつようになりました。人を動かすことの大切さを多くのITエンジニアやPMに知ってほしい,人を動かす力を身につけて失敗を回避してほしいと強く考え,私は教育コンサルタントとして活動するようになりました。

「教えてもらう」立場の人も,人を動かす能力を持つべき

人を動かすことが大切なのは,マネジャーやリーダーだけでしょうか。それとも,誰にとっても大切ですか。

 間違いなく,誰にとっても大事です。どんな人であっても,一人だけで仕事をすることはほとんどありません。ほぼすべての仕事は,人と一緒に進めていくものです。

 入社したての新人なら,先輩や上司に仕事を教えてもらったり,仕事のチェックをしてもらいますよね。分からないことを同僚や,社外の人,パートナー会社の人に聞くこともあるでしょう。

 こうした「教えてもらう立場の人」「指導してもらう立場の人」に必要なのは,気持ちよく教えてもらえるように,先輩や上司に働きかけることではないでしょうか。聞く態度が悪い,生意気な態度をとる…こんな行動をとるようだと,仕事を教えてもらいにくくなるでしょうね。これは「人を動かせていない」状態だと考えています。

そんな態度をとられると,教える意欲が萎えてしまいますね。

 できるだけ丁寧に,気持ちよく教えてもらうようにすることが大切です。それで自分の能力は上がりますし,ひいては組織や会社の生産性向上に寄与できるからです。「教えてもらう」立場の人であっても,人を動かす能力を持つべきです。

 部下を持っている,客先との窓口になっている,パートナー会社の管理をしている,といった役割の人は,さらに人を動かすスキルが必要になります。人との接点がある限り,人を動かすスキルセットは不可欠というわけです。

 人を動かす力は,職位や資格が上がり,責任が重くなるにつれて,より重要になっていきます。管理したり,利害が絡んだりする人の数が増え,相手との関係も複雑になるからです。このような責任の重い立場になっても,人を動かす能力が低いようでは,仕事はまずうまく行きません。きっとITpro読者の方も,普段から感じているのではないでしょうか。