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 先週後半の米国時間2009年7月30日,米Microsoftが開催するアナリスト向け経営説明会があった。イベントの名前だけ聞くと,一般人とは無縁な会合に思えるが,実は同社のさまざまな市場戦略を探る絶好の機会である。これをきっかけに,筆者はしばらく前から思いを巡らせていた点について,ようやく考えをまとめることができた。クラウド・コンピューティングという潮流に,果たしてMicrosoftは飲み込まれていくのかという問題だ。

クラウドに真剣に取り組んでいるMicrosoft

 今年の経営説明会は,同社がクラウド・コンピューティングを推進する意向をこれまで以上に明確に示したという点で驚きだった(関連記事:基幹系で使うにはまだまだ課題の多いクラウド・コンピューティング)。実のところ,クラウドという未来を前向きに受け入れていくことに関して,皆が思っている以上にマイクロソフトは真剣だ。だが,正直言って筆者も,ほんの1週間ほど前までは,同社の姿勢に懐疑的だった1人だ。冗談で「Microsoftはもうヤバイ状況か?」というタイトルを付けたプレゼンテーションを行っていたほどだ。

 Microsoftが“ヤバイ”状況かというと,答えは明らかにノーだ。実際,クラウドの導入に向けたMicrosoftの取り組みにきちんと目を向けてみると,同社の戦略は明確かつ論理的である。

 まずは全体像を簡単に押さえておこう。現在の我々は移行期にあると思う。つまり,どんな種類のコンピュータ・ユーザーであれ,ローカル・ベースとクラウド・ベースの両方のアプリケーションとデータを組み合わせて使っている。MicrosoftのCEOであるSteve Ballmer氏は経営説明会の中で,「人々がクラウドへと向かう中でも,こうしたさまざまなサービス向けのフロントエンドとしてWindowsアプリケーションを開発する人たちはいる」と述べている。

 だが,今後に目を向けると,重心がクラウドへと移っていくことは避けられない。もちろん今後も,ローカル・ストレージのニーズがなくなることはないだろう。特に業務用途では,法令遵守のためには不可欠だ。しかし,あらゆる角度,あらゆる観点から考えて,未来はクラウドにある。クラウドは,マーケティング目的の一時的な空騒ぎなどではない。クラウドこそが未来だ。

 これは筆者の考えだが,Ballmer氏の話も聞いてみよう。経営説明会で同氏は端的にこう述べている。「我々はクラウドを前向きに取り入れている。クラウド関連の構想はかなり形になっている。完成までは至ってはいないが,かなりの所まで来ている。この先は,さまざまな施策を断固として実行していく段階だ」。

既存ビジネスで獲得した資産の活用がMicrosoftの強み

 もちろん,同氏にとって大きな問題となるのが,クラウドからいかに収益を上げるかという点だ。デスクトップ製品という従来からのドル箱による収入が先細りし,サーバー製品も社内にサーバーを設置するオンプレミス型からホスティング型のサブスクリプション・サービス(関連記事:MicrosoftのSaaSを使ってみよう(前編)MicrosoftのSaaSを使ってみよう(後編))へと移行していく。その中で,同社は収入減にいかに対処すべきだろうか。

 これに対してBallmer氏はこう述べている。「我々は『Windows Azure』を立ち上げた(関連記事:Microsoft,「Windows Azure」の料金体系を発表,正式スタートは11月)。『Exchange Online』や『SharePoint Online』のように,正式に稼働させ,きちんと成果を上げ始めているサービスもある(関連記事:マイクロソフトが企業向けクラウド「Microsoft Online Services」の正式サービスを開始)。我々は『Office Web application』も発表した(関連記事:マイクロソフトが国内でも無償のWeb版Office,今秋にベータ公開)。クラウドを利益へとつなげる方法について,ビジネス面と技術面の両面から,概略は示せたと思う」。

 米Googleのようなクラウド専門の企業と比べると,Microsoftには大きな強みが2つある。1つは,過去数十年に及ぶビジネス経験があり,膨大な数の顧客を抱えている点だ。これらの経験と顧客は,クラウドへの移行においてプラスに生かせる(顧客に関しては,同社の誘導にしたがってクラウドに移行するところが多いはずだ)。

 もう1つ,さらに重要な強みと言えるのが,同社がクラウドとオンプレミスを組み合わせたハイブリッド型の戦略を打ち出している点だ。この戦略は,同社にとって特に重要な顧客である企業ユーザーにとっては極めて有効だ。Googleの場合は,全面的にクラウドを利用する形態のサービスが多い。一方Microsoftは,オンプレミス型とクラウド型の両方のソリューションを提供している。両者の連携も可能で,これらを適宜組み合わせて利用できる。

 同社COO(最高執行責任者)のKevin Turner氏は経営説明会で次のように述べている。「我々は顧客に選択肢を与えている。顧客は,すべてのアプリケーションのすべてのデータを全面的にクラウドで管理することは望んでいない。ユーザー,アプリケーション,競合関係,個人情報保護,セキュリティといったさまざまな理由から,管理の仕方を自ら制御したいと考えている。その選択肢をお客様に与えているのがMicrosoftだ。だからこそ我々は,今年『Business Productivity Online Suite(BPOS)』を立ち上げ,統合型のサービスを開始した(関連記事:「あらゆる規模の企業がクラウドに参加できる」,マイクロソフトがクラウド版グループウエアの効果を強調)。しかも,電子メール・サービスの利用者は既に100万人を超えている。今後も増加の一途をたどっていくはずだ」。

 同氏が併せて指摘した中には,同社がクラウドで継続的な成功を収めるうえで重要と思える要因がもう1つあった。それは,周辺のパートナ企業と形成する巨大なエコシステムの存在だ。Googleには,Microsoftのような公式のパートナ・プログラムは現時点では存在しないし,今後も提供されない可能性が高い。

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