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日本にも早い時期に1000台の大規模導入の事例あり

 iPhoneは米国で企業向け携帯電話端末として普及し始めているが,非常に早い時期に日本で1000台規模のiPhoneを導入した企業がある。それは,コンサルティング会社のベリングポイント社(現在はプライスウォーターハウスクーパースジャパン,PwC Japanに社名変更)で,2008年9月に全社員用に1000台のiPhoneを導入した(写真3)。米国のニューヨークタイムズ紙も,iPhoneの開発途上時のテストに参加していなかった企業としては世界初の大型導入事例となったと取り上げ,そのニュースにベリングポイント社自身も驚いた。

写真3●ベリングポイント社(現プライスウォーターハウスクーパースジャパン)が1000台のiPhoneを採用した
写真3●ベリングポイント社(現プライスウォーターハウスクーパースジャパン)が1000台のiPhoneを採用した
全社員をFOMA端末からナンバーポータビリティを使ってiPhoneへ全面移行。業務効率化だけでなく社員同士のコミュニケーションやワークライフバランスにも変化が表れてきたという。
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 導入を決断したのは,グローバルリアルエステート・アンド・サポートサービス北アジアパシフィック統括リーダー(当時)の杉山優子氏である。ベリングポイント社は,名刺に社員の携帯電話の番号を印刷するなど携帯電話を使った取り組みで,常に世間の注目を集めてきた会社である。それまではNTTドコモのFOMA端末を採用していたが,全社員がナンバーポータビリティを使ってソフトバンクモバイルのiPhone 3Gに切り替えた。

 杉山氏によれば,同社では数年前まで社員一人当たりの平均通話時間は1日3~4時間だったが,iPhone導入後には1時間前後に減ってきたという。使い方が音声中心から電子メールなどのデータ中心に移行し始めたというのだ。携帯電話とパソコン+データ通信カードの組み合わせという利用形態が広がりつつあったが,これを社内ネットワークへのアクセスやメール,Webも利用できるスマートフォンに一本化することで,月々の通信コストを30%も抑えることができると試算した。

 既にNTTドコモの端末を使っていたため,ドコモが発売していたスマートフォンのBlackberryも検討したが,専用サーバーなどの設備投資が必要だったことや,NTTドコモが当時,データ通信料に上限を設けていなかったことを問題にした。これに対してiPhone 3Gでは当初から,2段階の従量課金上限制(CAP)によって上限価格が設定されていたため,コストシミュレーションがしやすかったという。

 同社がマイクロソフトのExchangeサーバーを利用していたことも,重要なポイントだった。iPhoneとExchangeサーバーのシームレスな連携によって,「ミーティングを開くときも,その場で全員の空き時間を見つけてスケジュールが決められるようになった」(杉山氏)。

 会社のシステムを管理する尼子倫久氏は,「ExchangeサーバーとiPhoneの組み合わせはセキュリティ的な観点から見ても有効だ」と語る。万が一,社員が端末を紛失してもサーバー側の設定を変更するだけで,iPhone側からは重要情報を参照できなくなるからだ。

 その一方で,紛失後に用意した代替機は,バックアップ情報を復元し,サーバー設定を行うだけの,わずか数分の操作で紛失直前とほぼ同じ状態に戻る。ただし,社員のiPhoneへの愛着が強いのか,ベリングポイント社では,これまでの携帯電話機と比べても紛失が少ないという。

残業が減り,会社の風通しがよくなる

 杉山氏は,「iPhone導入は効果測定がしにくい社内の風通しのよさや,社員達のワークライフバランスにも変化をもたらしている」と言う。杉山氏自身,仕事の効率が劇的に改善したそうだ。iPhone導入以前は,会社についてから午前中いっぱいはメールの返事だけで忙殺されることが多かった。しかしiPhone導入後は,通勤途中でもiPhoneを使って社内のネットワークに届いたメールを確認。必要であればその場で返事を書けるようになった。

 また,パソコンの電子メールは大きな画面とキーボードを使った文字入力のおかげで,メールの内容が挨拶などから始まる冗長なものになりがちだ。そうした冗長なメールに用件だけのメールを返すことは,相手に「そっけない」と受け止められる心配があるため,返信も冗長になりやすい。しかし,iPhoneから送信したメールには「iPhoneから送信」という一言が自動的に挿入されるおかげで,用件だけのメールでも失礼と取られにくいのも「意外な発見だった」と杉山氏は語る。このようにして通勤中にその日の仕事に関連したメールや業務報告を読むことができるため,会社に到着してから仕事の立ち上がりまでの時間も40分ほど短くなり,残業時間も減ったという。

 これ以外の「意外な発見」もある。同社では一人ひとりがクライアントを抱えて外回りをしていることが多いため,同じオフィスにいる同僚でもあまり話さないことが多かった。ところがiPhoneを導入したところ,iPhoneに入れたアプリの情報交換などをきっかけに,社員同士の交流が活性化したという。杉山氏は「不景気で安易に人員削減をする企業も多いが,iPhone導入によって社員の志気向上や残業代削減など業務効率の改善を図る方が長期的にはよいのではないか」と言う。