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アクセンチュア IFRSチーム
経営コンサルティング本部
財務・経営管理 グループ シニア・マネジャー
小野寺 拓也

 IFRS(International Financial Reporting Standards:国際会計基準または国際財務報告基準)はその名が示す通り,国際的な会計基準です。世界100カ国以上が自国の公開企業あるいは上場企業に対して,IFRSの適用を強制している,もしくは適用を認めています。

 会計基準とは,企業が経済活動を帳簿に記録する際に従うべきルールを指します。会計基準に従わずに作成された財務報告は,会計士監査により適正なものと認められないことになります。

 IFRSを作成・公表しているのは,様々な国や関係団体で構成されるIASB(International Accounting Standards Board:国際会計基準審議会)です。IASBの歴史は1973年に設立されたIASC(International Accounting Standards Committee:国際会計基準委員会)にさかのぼります。

 こうした経緯から,IFRSでは原則として,IASCが作成・公表したIAS(International Accounting standards:国際会計基準)が継続して適用されています。

世界各国で適用が進む

 IFRSを適用した国は着実に増えつつあります。EU加盟国は2005年から上場企業に対し,IFRSに準拠した財務報告を義務付けています。

 米国でも2002年以降,IFRSとのコンバージェンス作業を続けています。コンバージェンス(convergence:収束・収斂)とは,自国の会計基準とIFRSに重要な差異がないよう自国の会計基準を修正していくことを意味します。

 2008年11月には,米国企業に対してIFRSを容認・強制適用するためのロードマップ(案)を公表しました。その中では,一定の要件を満たす企業については2010年以降,IFRSに準拠した財務諸表の提出を容認するともに,2014年以降にIFRSを段階的に強制適用することを,2011年までに決定する案を提示しています。

 その他の地域では,ブラジル,インド,中国といった新興国も上場企業へのIFRS適用を既に認めている,あるいは認めることを決めています。

 日本では,2007年10月に日本の会計設定主体であるASBJ(Accounting Standards Board of Japan:企業会計基準委員会)とIASBの共同声明の中で,IFRSへのコンバージェンス方針を明確にしています(東京合意)。

 IFRSの強制適用については,金融庁が2009年6月に公表した「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」で,2012年までにその是非とその実施時期を判断する方針であることを公表しています。IFRSの強制適用の時期は「2015~16年」としています。

IFRS対応には「2年以上,1000万ドル以上」がかかる

 アクセンチュアでは,2008年に最高財務責任者(CFO)を含む米国上場企業の経営幹部200人以上を対象に,IFRS対応に関するアンケートを実施しました。この結果は,数年遅れで米国と同様のIFRS対応を進めている日本企業にとっても参考になるでしょう。

 まず,IFRS対応にかかる期間と費用を尋ねたところ,回答者の大多数が2年あるいはそれ以上の期間を要し,1000万ドルから5000万ドルの費用が必要だと答えました。米SOX法への対応に要したコスト以上の投資が必要と考えていることを示しています(図1)。

図1●IFRS適用/導入にかかる期間は?
図1●IFRS適用/導入にかかる期間は?
出所:Accenture 2008 Preparing for International Financial Reporting Standards (IFRS)
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図1●IFRSの導入コストは?
図1●IFRSの導入コストは?
出所:Accenture 2008 Preparing for International Financial Reporting Standards (IFRS)
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 なぜ,IFRS対応に多大な期間とコストが必要なのでしょうか。IFRS適用による影響が本社経理部にとどまらず,様々なビジネスプロセス,子会社・関連会社にまで及ぶと認識しているからです。情報システムへの影響についても,7割以上が「ある」としています(図2)。

図2●以下の項目は,IFRS適用の影響を受けると思いますか?
図2●以下の項目は,IFRS適用の影響を受けると思いますか?
出所:Accenture 2008 Preparing for International Financial Reporting Standards (IFRS)
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 このアンケート結果が,すべての上場企業に当てはまるわけではない点に注意が必要です。各社の業務プロセスや情報システムが,IFRSへの対応でどのような影響を受けるかは一様には言えず,個別に調査・検討する必要があるからです。

 ただし,日本基準とIFRSのギャップの大きさを考えると,IFRS対応の際に大きな混乱が起きる可能性は極めて高いと言えます。混乱の度合いは,数年前のJ-SOX(日本版SOX法)対応よりも大きいかもしれません。こうした事態を避けるために,早いタイミングで自社への影響を適切に把握することが最低限必要です。