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アクセンチュア IFRSチーム
経営コンサルティング本部
財務・経営管理 グループ シニア・マネジャー
小野寺 拓也

 IFRS(国際会計基準)では,IFRSを初めて正式に適用する企業に対する規定を設けています。IFRSを適用する企業は,必ずこの規定にしたがって初年度の財務報告を作成する必要があります。

 具体的には,適用開始日(前期の期初)の財政状態計算書および過去2期分(前期および当期)の財政状態計算書,同じく過去2期分の包括利益計算書,キャッシュ・フロー計算書,株主持分変動計算書と関連する注記を,IFRSに準拠して作成する必要があります()。

図●IFRS初度適用が求める開示情報
図●IFRSと日本基準の開示範囲の違い
作成:アクセンチュア
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 財政状態計算書は日本基準の貸借対照表(B/S)に相当します。企業の資産・負債・資本の状況を表示します。包括利益計算書は日本基準の損益計算書(P/L)に当たります。

 株主持分変動計算書は日本基準の株主資本等変動計算書に相当します。株主資本の増減を表示します。キャッシュ・フロー計算書は日本基準のキャッシュ・フロー計算書と同様に,企業の資金の流れを表示します。注記は財務諸表に対し,必要に応じて詳細に説明するものです。IFRSの注記は日本基準より詳細に定められています。

過去2期分は新基準での処理が必要

 IFRSに基づいて初年度の財務報告を作成する際に適用する会計方針は,適用年度時点で有効な基準でなければいけません。また,その期間は同一の会計方針で処理を行う必要があります。つまり,IFRS適用年度から新規に適用される新しい基準であっても,原則として最低でも2期分は新基準での処理が求められることになります。

 財政状態計算書も,原則として適用年度時点で有効な基準に基づいて作成する必要があります。このため,すべての資産・負債について過年度にさかのぼって修正し,差異がある場合には利益剰余金として計上しなければなりません。

 ただし,すべての資産・負債について過年度にさかのぼって修正するとなると,企業に対して大きな業務負荷がかかります。このため,企業結合や為替換算調整勘定の取り扱いなど,一部の基準については免除規定を設けています。

IFRS適用開始の2年前の期初を目標に準備が大切

 具体的に,IFRS適用企業への影響を見てみましょう。いま,2012年3月31日をIFRS適用初年度の財務報告作成日とした場合を考えてみます。

 この場合,2010年4月1日をIFRS移行日として,2012年3月31日時点で有効な会計基準を利用して,移行日から2年度分すなわち2010年度と2011年度の財務報告を作成する必要があります。

 2010年度の段階では,まだIFRSを正式に適用したわけではありません。このため,正式な財務報告は日本基準で行うことになります。つまり,少なくとも2010年度は日本基準とIFRSという2つの基準で財務諸表を作成する必要があります。言い換えると,正式適用する2011年度の財務報告に加えて,IFRSへの移行手続として(1)移行日(2010年4月1日)のB/Sと,(2)2010年度の財務報告の作成が求められることになります。

 会計基準を日本基準からIFRSに切り替えるだけでなく,上記(1)(2)が求められるため,業務負荷は非常に大きくなります。準備が不十分だと,現場の混乱も予想されます。初度適用にあたり,遅くてもIFRS適用を開始する2年前の期初をターゲットとし,それに合わせて人材育成や,あるべき業務プロセス,情報システムの構築を周到に準備する必要があると言えます。

 IFRSは連結ベースの財務報告を求めているので,国内だけではなく,海外法人へのIFRS適用も考慮する必要があります。この点について補足しておきます。

 企業会計基準委員会(ASBJ)が示した実務対応報告18号では,海外子会社は2008年度以降,連結上,日本基準・米国基準・IFRSのいずれかを採用することを求めています。既にIFRSに切り替えている海外子会社は問題ありませんが,日本基準または米国基準を使っている海外法人については,今後どのようにIFRSに対応するかが非常に重要な問題となります。

 本社・子会社へのIFRS一斉導入(ビッグバン導入)は有力な方法の一つではありますが,多くの子会社を抱える上場企業にとって容易ではありません。実務対応報告18号を利用して,海外法人から先行して導入するアプローチが,ノウハウを社内に蓄積するという意味でも有力な選択肢の一つと言えるでしょう。この方法を採ると,実務における大きな混乱を避け,円滑に切り替えを進められる可能性が高まります。