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野村総研(上海)

 日本の携帯電話の流通では,携帯電話事業者がメーカーから端末を買い上げ,携帯電話事業者のチャネルを通して販売するモデルが一般的だ。中国では,携帯電話事業者がSIMカードを,メーカーが端末をそれぞれ独自のルートで販売している(図1)。ただし,ほとんどの場合に両方を同じ店舗で購入できるので,ユーザーからの見え方は日本と違いがない。

図1●中国での携帯電話流通モデル
図1●中国での携帯電話流通モデル
SIMカードと端末は同じ店舗で購入できる場合が多いが,日本と異なりSIMカードと端末はそれぞれ別のルートで流通する。

 SIMカードのチャネルは,主に3本の柱で構成される。通信事業者のブランドを冠した看板を使う「キャリア・ショップ」,卸ルートから商品を仕入れて販売する「零細小売店」,直接携帯電話事業者からSIMカードを仕入れて販売する「家電量販店」,または「併売店」である。

規律崩れるSIM流通,3Gで復活?

 ある携帯電話事業者の情報によると,上海地区のSIMカード販売シェアはキャリア・ショップ経由が約20%,卸業者経由が約55%,家電量販店・併売店が約25%となっている。

 携帯電話事業者にとって,SIMカード販売量が多い卸ルートをいかにコントロールするかが最重要の課題であるが,実際には卸ルートをうまく制御できていない。中国ではまず事業者が定価でSIMカードを卸会社に販売し,SIMの販売量に応じて卸会社にキックバックを支払うのが一般的な流れである。ところが,事業者間の競争激化に従って,このモデルが崩れている。

 携帯電話事業者は,大手卸業者や大規模な仕入れの会社に,優先的に自社のSIMを扱ってもらうために事後ではなく,事前に販促費用を渡している。卸会社側も携帯電話事業者に対する発言権を上げるために,本来許可されていない別の省で販売したり,定価よりも安い値段で販売するなど,あらゆる手段で大量のSIMカードをさばこうとしている。

 このように卸ルートでSIMの販売競争が激化する一方で,携帯電話事業者のコントロール下にあるキャリア・ショップは,閑古鳥が鳴いている状況である。ただし,今後3Gが本格化するにつれてキャリア・ショップの勢いが増しそうだ。3G時代にはコンテンツやサービスの優劣が勝敗を分ける。事業者は,キャリア・ショップの重要性を認識しており,今テコ入れの真っ最中だ。

葛島 知佳(くずしま・ともよし),吉永 欣栄(よしなが・きんえい),許 文(XU Wen),周 睿(ZHOU Ray),羅 凡(LUO Fan),林 継哲(LIN JiZhe),横井 正紀 (よこい・まさき)
野村総研(上海)
野村総研(上海)は野村総合研究所の中国現地法人。本稿の執筆チームは野村総研(上海)で,中国の情報・通信産業を担当しており,日本企業,中国企業,中国政府系団体に対してコンサルティングを行っている。