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エノテック・コンサルティングCEO 海部 美知 エノテック・コンサルティングCEO
海部 美知

 週末のショッピング・モール。やけににぎやかな一角はApple Storeだ。前回と比べると今回の「iPhone 3GS」の発売日はやや穏やかだったものの,相変わらずのiPhone景気である。

 その2週間前には,米パームの「Palm Pre」が世に出た。iPhoneほどではないが,それでも発売日には通信事業者の米スプリント・ネクステルにとって1日当たりの売り上げの最高記録を更新した。さらに,台湾HTCからは新型Android端末が近く発売予定だ。

 カナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)の「BlackBerry」も引き続き好調で,米国スマートフォンのトップブランドの地位は磐石である。

端末に対する通信事業者各社の思惑

 スマートフォンの舞台裏で,通信事業者はそれぞれの事情を抱えている。

 AT&TはiPhoneを擁し,年率24%(2009年第1四半期)と順調に新規顧客を伸ばしている。財務アナリストは,多額の販売奨励金をiPhoneに支払っていることや,iPhoneのデータ使用量がネットワーク容量を圧迫している,といった問題点を指摘する。しかし,3Gネットワークへの端末対応普及が遅れていたAT&Tにとって,単一機種で顧客が自発的にどんどん移行を進めてくれるiPhoneは,実はありがたい端末なのだ。

 スプリント・ネクステルは,ネクステル買収に伴う種々の問題から加入者が流出し,業績も低迷している。そこで,起爆剤として他社にない人気端末が欲しい。同様にここ数年業績低迷していたパームと利害が一致した。

 上記の2社と対照的なのは,ネットワークの信頼性を売り物とするベライゾンだ。「端末主導の営業戦略は採らない」として,既存のBlackBerryなどの対応にとどまり,新規端末は出していない。それでも加入者が年率29%増(2009年第1四半期)とAT&T以上の成績を叩き出している。ただし,米アップルやパームの端末を出すという噂もある。

開発者を取り合う「隣町対抗戦」

 通信事業者がそれぞれの立場で粛々とスマートフォン戦略を採る一方,端末やプラットフォームのベンダーは,別の舞台で戦いを繰り広げている。

 地理的にも近いアップル,パーム,そして米グーグルのOS3社は,シリコン・バレーに集まっている開発者を取り合う。さながら「隣町対抗戦」の様相を呈している。さらにRIM,米マイクロソフト,欧州シンビアン陣営もこの戦いに加わっている。エンドユーザーをたくさん集めるにはアプリケーションを充実させる必要があり,そのためにはまずは開発者を集めなければならないという,ゲーム業界と似た構造がある。ここには日本のプレーヤの姿が見えない。

 「ガラパゴス」とも言われる日本の携帯電話業界が,急成長するスマートフォンに関しては開発の波に乗り遅れ,「置いてきぼり」にされる恐れがあると思っている。

海部美知(かいふ・みち)
エノテック・コンサルティングCEO
 NTTと米国の携帯電話ベンチャNextWaveを経て,1998年から通信・IT分野の経営コンサルティングを行っている。シリコン・バレー在住。
 子供が夏休みに入った。米国の夏休みは,子供向けに種々のテーマを掲げた「サマーキャンプ」が花盛り。スポーツやアートからソフトウエア開発まで,学校では習えないことを試すチャンスだ。日本でも,子供たちが参加できるサマーキャンプがあればいいのにと思っている。