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コンピュータ・アーキテクチャ―設計・実現・評価の定量的アプローチ
著者:デイビッド・A. パターソン,ジョン・L. ヘネシー
翻訳:富田真治,新実治男,村上和彰 出版社:日経BP
価格:1万2233円(税込)
ISBN:978-4822271527

 俗称,ヘネパタと呼ばれているコンピュータ・アーキテクチャを解説した本だ。著者2人はRISCの大家。パタヘネと呼ばれる同じ著者たちによる上下2巻の「コンピュータの構成と設計~ハードウエアとソフトウエアのインタフェース」は別の本なので,注意して欲しい。ちなみに,ヘネパタとかパタヘネとか言うのは,著者名を略してくっつけたものだ。同じ著者たちの本でも順番を変えてあるため,この2つの本の俗称が異なる。便利なのだが,どちらがどちらか分からなくなることもあるので,よほどマニアな人向けでなければ,正式名称で話したほうが無難かもしれない。

 この本はちょうど私がOSの開発を始めることになったときに読んだ本だ。それまでも,DECという会社のVAXというハードウエアとVMSというOSのアーキテクチャを解説した「VAX/VMS Internal and Data Structures」(真っ黒な装丁だったので,黒本とわれわれは呼んでいた)を読んでいたが,汎用的なCPUとOSのアーキテクチャ解説という意味ではこの本が初めての本だった。

 この本はコンピュータ・アーキテクチャを学ぶものが最初に読むべき本ではない。そのようなものは,それこそパタヘネ本と呼ばれる「コンピュータの構成と設計~ハードウエアとソフトウエアのインタフェース」やそのほかのコンピュータ科学の教科書などを読むことを薦める。この本はある程度の経験か基礎知識があるものに対して,さらに詳しい高速化の技法や,まさに本のタイトルになっているように,複数のアーキテクチャの比較を行う際の定量的な評価手法を提示するものだ。

 最近はウェブ技術に代表されるインターネット上のアプリケーション開発などがトレンドなのかもしれないが,多くのシステムは結局CPUとOSによって支えられている。自分たちの社会をささえるシステムの仕組みを理解することは今でも大切だろう。

 ちなみに,原書である「Computer Architecture: A Quantitative Approach」は第4版まで出版されている(第4版は2006年の発行されている)。私もまだこちらは読んでいないが,目次などを見ると,HPC (High Performance Computing) やネットワークで接続された分散環境の考察なども書かれているようだ。このような歯ごたえのある書籍の翻訳というのは,翻訳そのもののコストと販売見込みを考えると難しいかもしれないが,日本の技術者へ良質な学術書の提供という点からも是非日本語版の可能性を検討してもらいたい。出版社もちょうど日経BP社だし。

 本書と同じようにアーキテクチャなどを解説した良書として,以下の2冊も薦めておく。

詳解TCP/IP〈Vol.1〉プロトコル(Vol.3まであるが,まずはVol.1を薦める)
著者:W.リチャード スティーヴンス
出版社:ピアソンエデュケーション
価格:6300円(税込み)
ISBN:978-4894713208

トランザクション処理〈上〉―概念と技法トランザクション処理〈下〉―概念と技法
著者:ジム グレイ,アンドレアス ロイター
翻訳:喜連川優
出版社: 日経BP社
価格:7140円(上下とも)
ISBN:978-4822281021(上),978-4822281038(下)

Watcherが薦めるこの一冊