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 ジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)という女性アーティストがいる。1968年のデビューなので,40年近くもの間,アメリカの音楽界を代表し続けているアーティストだ。彼女の楽曲が必ずしも常にヒットチャートを賑わしているというわけではないが,音楽スタイルを多彩に変えながらも確実に根強いファンの心をつかみ続けている。また,グラミー賞も何度か受賞している。

 当初フォークシンガーとしてデビューした彼女であるが,その後,時代とともにジャズやロックのエッセンスを加え,ジャンルにとらわれない独特の音楽を形成する。ジャズ色が強まった1970年中盤以降は多くの個性的なアーティストと共演する。連載第1回目の「不調和の先に」で紹介したジャコ・パストリアス(Jaco Pastorius)をはじめとして,ギタリストのパット・メセニー(Pat Metheny)や昨年亡くなったマイケル・ブレッカー(Michael Brecker),ジャズ界の巨人チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)などなど,数え上げればきりがない。これだけの個性的なメンバーに囲まれると,アーティストによっては共演者の色に染まってしまうこともあるが,彼女の場合は誰と演奏してもあくまでもジョニ・ミッチェルだ。1人でアコースティックギターを抱えて演奏していたときから変わらぬジョニ・ミッチェルの世界を作り上げる。共演者も彼女の個性と交わることによって新しい世界を拓いていく。

 彼女は音楽界に絶望したのか2002年に一度,レコーディング・アーティストとしての引退を発表していたが,昨年また新アルバムで復帰した。ファンとしては大変喜ばしい。

日本でiPhoneが売れていないらしい

 鳴り物入りで日本上陸を果たしたアップルのiPhone 3G。2008年7月11日の発売日当日の狂想曲は多くのマスコミを賑わし,日本の携帯電話業界が大きく変わるのではないかと多くの人に期待された。それから,3カ月ちょっと過ぎた。どうもiPhoneは日本では失敗だという話を最近耳にする。その根拠の多くは,発売開始から今までの販売実績が振るわないことにあるようだ。ソフトバンクは販売台数を発表していないが,販売店などのデータから予想すると,20万程度というのが有力のようだ(「FujiSankei Business i. 総合/【クローズアップ】どうなる スマートフォン戦線異常あり」)。これは携帯電話の市場シェアとして見た場合,どのくらいの数字なのだろうか。

 2008年の日本の携帯電話販売台数については,いくつかのリサーチ機関からのデータで予測できる。まず,ガートナーは日本の2007年の携帯電話販売台数を5230万台と発表している。また,2008年上半期の国内販売実績は,22%ほどの前年割れとしている。したがって,単純に年間販売台数を昨年より20%ほど少なく見積もってみると,2008年の販売台数は5230万×0.8で4100万台強となる。

 また,MM総研も携帯電話の市場規模に関するニュースリリースを出しており,それによると「08年度上期は前年同期比21.2%減少の1981万台」であり,「08年度通期は3940万台と予測」している(ただし,MM総研のレポートは,2008年4月から2009年3月までを2008年度としているので,ガートナーとそのまま比較はできない)。これらのデータを総合すると,2008年の日本国内の携帯電話販売台数は4000万台程度と考えておいて間違いないだろう。

 この4000万台という数字を使って,iPhoneのマーケットシェアを算出してみよう。2008年末までにiPhoneが30万台売れたとする(これはかなり楽観的な見通しだ)と,0.75%ほどのシェアとなる。確かになんとも小さい数字だ。しかも,これは新規販売携帯電話に対する割合に過ぎない。同じMM総研のニュースリリースでは「携帯電話市場の総契約数は08年9月末で約1億483万件となっているが09年3月末には1億810万件に達する」とされているので,2008年末の時点で日本に存在する携帯電話は1億650万程度となると予想できる。こちらでシェアを計算してみると,0.28%。350人に1人持っているかどうかの数字だ。私の近辺ではiPhone所有者が異常に多いのだが,そこを離れてみると,確かに電車内などでもiPhoneを持っている人はあまり見かけることがない。

 日本ではスマートフォン市場がそもそもまだ立ち上がっていないのだから,iPhoneのシェアを一般携帯電話の中だけで評価するのは酷かもしれない。では,日本でのスマートフォンの市場規模はどのくらいだろう。市場が小さいためか,日本だけのスマートフォン市場のリサーチデータは少ない。だが,2008年データリソースが発行したレポート(「日本スマートフォン市場分析」)によると,2008年中に198万台ほどになると予測されている。スマートフォンの市場は,iPhone以外にもRIM(Research In Motion)のBlackberryやマイクロソフトのWindows Mobileなどが参入し,今度こそいよいよ立ち上がるかと期待されている。

 一方で,スマートフォン市場は日本では伸び悩んでいるというレポートもガートナーから出されている。それによると,2008年の国内販売台数は2007年よりも24%ほど減少したという。両者のレポートを総合して考えると,2008年末の日本のスマートフォン市場規模は150万台程度と考えるのが無難かもしれない。この数字を利用すると,iPhoneの日本のスマートフォン市場におけるシェアは20%ほどになる。これはそんなに悪い数字ではない。

 ただ,iPhoneはスマートフォンとして一部の先進的なユーザーだけを対象にしているわけではない。このことを考えると,下半期からの参入で,わずか2モデル(カラーバリエーションを除く),さらには携帯電話キャリアの対応が1社のみという不利な条件を差し引いても,やはり販売は伸び悩んでいると言わざるを得ないだろう。