PR

【ムダ取りとカットの違い】

 情報サービス産業の関係者の話を聞くと、新規投資の抑制はかなりひどいが、運用に関しては活発でデータセンターの新規需要も衰えていないそうだ。ただ、多重階層型労務形態で行われている活動はソフトウエアの生産が多いので、会社のモデルによって業績の差が激しくなっているという。

 おおむね予想された状況であるが、ユーザー企業では経営層からの情報コストの削減要求は相当に厳しくなっていることと思う。新規開発を先送りし、機器の更新を先送りし、外注人件費を削減したりして、さまざまな即効削減の手を打っているようだ。景気の低迷が続けば、さらなる要求も避けられない。こういう時に注意をしなければならないことがある。それはコスト削減を目的にしてしまうことだ。

 コスト削減の要求に応えようとして、目先のことばかりに気を奪われコストのムダ取りの本質が見えなくなってしまう。そうするとムダ取りもカットも区別なく対象になり、コストを削減するという行為が選別もなく行われ、総額を圧縮することに変わってしまい目的化してしまうのである。私は、ムダ取りとカットを使い分けている。ムダ取りは機能やサービスを損なうことはない。逆に機能やサービスを向上させることもある。しかし、カットは何らかの機能やサービスを犠牲にする。不便や我慢を強いることもある。

 新規投資が急激に冷え込んでいることは先送りや中止によって機能やサービスをカットしている恐れがある。あるいはもともと不要不急のシステム開発が計画されていたのかもしれない。IT(情報技術)やIS(情報システム)がビジネスのインフラとなっている現状では、必要なものは投資しなければならない。

 本質はムダな投資を避ければよいだけで、投資をしないこととは異なる。これを忘れて遮二無二削減に走れば、削減が目的になってしまう。経営者にはコスト構造を明確にしてムダ取りの方針を説明すれば、新規投資も了解を得られるはずだ。それでも納得しない経営者には、大幅なムダ取りを実践して財務的な負荷を掛けない新規投資をやって見せればよい。

 機器の更新などは積極的な組み換えの場合と予防的な場合とがあり、積極的な組み換えによって性能を上げてコストを下げる一挙両得も可能だ。最近やや過剰な反応かとも思われるくらい仮想化や統合が話題になっている。これなどは新しい技術の取り込みによるムダ取りといえ、実際に事例も増えている。

 重大な障害発生を避けるために予防的に更新時期のきた機器類を入れ替えることもある。保持すべきサービスレベルを考えて先送りが可能なら好不況にかかわらずそうすればよい。クラウドコンピューティングの舞台裏では、古い機器でも徹底的に使い切るようなことをするはずだ。最新のハイスペックの機器を欲しがるところに、既にムダがある。