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 NTTグループの技術開発会社であるNTTアドバンステクノロジ(NTT AT)が中心となって,IPネットワークの技術を解説した本である。IPネットワークとはいっても,インターネットや企業向けネットワークは対象としておらず,NGNをはじめとした通信事業者のIPネットワークを対象としている。

 本書の「はしがき」で述べているが,通信事業者のIPネットワークにこれからかかわろうとする人が実務のための基礎技術を学ぶことを目的にしているという。そのため,IPネットワーク技術全般を網羅し,さらに最新の技術動向も盛り込んでいる。そのため,500ページ以上にも及ぶ労作となった。執筆の中心となったのはNTT ATのネットワークテクノロジセンタ(TEC)の社員で,執筆者の合計は70名以上にもなる。

 本書の構成は大きく3部構成になっている。第I部の「ネットワーク技術の概要」では,最新のネットワーク・サービスとそれを支えるネットワーク・アーキテクチャを説明している。第II部の「個別ネットワーク技術編」では,通信事業者のIPネットワークで使われる主要な要素技術を個別に解説している。紙数の約80%を占めるメイン・コンテンツである。具体的な内容としては,トランスポート系技術として,IP関連技術,IPsec,ルーティング・シグナリング関連技術,QoS関連技術を取り上げている。続いて,サービス系技術として,SIP,RTP/RTCP,No.7信号方式,SIGTRAN,H.248,Diameter,番号計画,SDP/Parlay,アプリケーション・サーバー,P2Pが解説されている。さらにネットワーク構築技術,ネットワーク運用系技術,宅内・構内系技術などを詳しく説明している。最後の第III部「代表的個別技術詳細」では,第II部で紹介した技術のなかから,SIGTRAN,Diameter,トラフィック・需要予測技術,品質評価技術の4テーマを取り上げ,より詳細に解説を加えている。

 テーマ個別の内容については,1~2ページに1点の図を必ず配置するなどの工夫で,丁寧に分かりやすく説明している。また,一般のIPネットワーク解説書で見逃されがちになる電話系の技術(共通線信号方式やSIGTRAN)なども説明している点も良い。

 ただし,全体の構成がバラバラで初心者にとって不親切な設計になっていることは否めない。まず第I部は,必ずしも全体を分かりやすく俯瞰した“入門”となっておらず,かなり入り込んだ難しい内容になっている。また,第III部で詳細に取り上げたテーマを選んだ基準もよく分からない。細かいことを指摘すると,掲載されている図面の体裁が大きく異なっており,悪い言い方をすると“寄せ集め”な感じがしてしまう。せっかくの意欲的な本なのだから,もし第2版を出すならば,ぜひ改善してほしい点だ。

やさしいNGN/IPネットワーク技術箱

やさしいNGN/IPネットワーク技術箱
NTT ATネットワークテクノロジセンタ編著
電気通信協会発行
3885円(税込)