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 電通はヤッパと提携し,電子雑誌事業「MAGASTORE」を今夏より開始する。スマートフォンや携帯電話機,パソコン,ゲーム機など様々な端末で利用できる電子雑誌事業を展開する計画である。アップルのiPhone向けのサービスから開始し,2009年内に主要携帯電話キャリアとパソコンにも対応する。サービス開始時には,朝日新聞出版の「AERA」,扶桑社の「週刊SPA!」と「SUMAI no SEKKEI」,ダイヤモンド社の「週刊ダイヤモンド」など,20社以上の出版社から約30誌の販売が決定しているという。

出版社がコンテンツ提供する際の負担が少ない

 MAGASTOREは,(1)出版社がコンテンツ提供する際の負担が少ない,(2)提供コンテンツを雑誌に特化,(3)異なる機器で同一のコンテンツ利用が可能な「超流通」モデルを採用,(4)広告配信ビジネスを視野に入れている──といった特徴を持っている。

 (1)の出版社の負担に関して,電子雑誌は印刷用の誌面レイアウトをそのまま利用するため,「印刷用に制作したDTPデータを電子雑誌用のデータに変換するだけでコンテンツを作れる」(ヤッパ代表取締役社長の伊藤正裕氏)という。DTPデータの変換と配信サーバーの運用にかかる費用は電通とヤッパが負担し,コンテンツが売れた場合に電通とヤッパ,出版社の3者で売り上げを分配する。コンテンツが売れない場合の出版社の費用負担は少なく,事業参入のリスクが小さい。これは「多くの出版社に参加してもらい,サービスの認知度や利便性を高めることで利用を促進したい」(電通 雑誌局 ビジネス開発部の文分邦彦氏)ためである。

 機能面では,通常A4前後のサイズを前提にレイアウトする誌面を小さな画面で読むための工夫や,雑誌的な読書感を演出する工夫も盛り込んでいる。雑誌データにはレイアウト・イメージだけでなく,キーワードなどのメタ情報と,テキスト・データを埋め込める。ファッション誌など,ページ内の離れた場所に本文が散在する場合,レイアウト画面で全体を確認し,次にテキストだけを表示する画面に切り替えれば,レイアウト画面を拡大したりスクロールしたりせずに,まとめてテキストを読める。また,誌面の縮小画像を前後に素早くスクロール表示する機能を使い,ページをパラパラめくって目に止まった記事を読むような,雑誌的な読書感を演出できる。

電子雑誌は新しい広告メディア

 (2)の提供コンテンツを雑誌に特化させているのは,電通が電子雑誌を新しい広告メディアとして捉えているためだ。「広告収入と販売収入の二つで成立している雑誌だからこそ,広告ビジネスが本業の当社が手がける意味がある」(電通の文分氏)という。一方,書籍やマンガには広告枠が少ないため,当面手がける予定はない。

 (3)の「超流通」は購入履歴を利用者IDに紐付けることで実現する。異なる機器から同じコンテンツを閲覧できるようになるため,自宅で読むときは画面の大きいパソコンから,外出先で読むときはいつも持ち運ぶ携帯機器からなど,利用シーンに合わせて様々な端末から電子雑誌を閲覧できる。

 (4)の広告配信は,サービス開始当初は提供しない予定だが,電通にとって最も期待の大きい要素である。性別/位置情報/購読履歴といった「利用者属性」や,雑誌の「コンテンツ」や記事内の「キーワード」に連動した広告配信など,新しい仕掛けを試行する。また,動画や音声を使った広告も可能だ。

 雑誌の電子化によって,広告だけでなく販売面でも変化がある。電子雑誌は印刷と配送にほとんどコストがかからないため,「実際の雑誌より低い価格を設定するところが多い」(ヤッパの伊藤社長)という。また取り扱う雑誌が増えた際に,ビジネスやスポーツなど同一ジャンルの複数の電子雑誌を,月額固定料金でパック販売するモデルも検討している。「量が多くて全部の記事を読めなくても,それぞれの雑誌を個別購入するよりリーズナブルに提供できればニーズはあるはず。出版社にとっても,契約人数に比例した収益を安定して期待できるので,事業戦略を立てやすいというメリットがある」(電通の文分氏)と説明する。

 将来的には,専用リーダーの開発も視野に入れている。「欧米では専用リーダーが複数メーカーから発売されており,技術的な問題はない。“ビジネスモデル”,“コンテンツ”“専用リーダー”の3要素をどう組み合わせるかが重要となる」(電通の文分氏)と語り,専用リーダーも含めて幅広く事業展開する方針を示した。