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CIO(最高情報責任者)に相当する取締役常務執行役員システム部長の池田俊明は、セブン-イレブンのスピード感でATMも設置していった (写真:北山 宏一)

 旧・三和銀行出身である取締役常務執行役員システム部長の池田俊明は、「ATMを1カ月に数百台設置する計画を最初は信じられなかったが、それができてしまうノウハウがセブン-イレブンとパートナーにはあった。旧来型の銀行とセブン-イレブンでは経営のスピード感やアウトソーシングを生かす発想が全く違う。私自身、システム開発の概念を大きく変えなければならなかった。三和時代の常識は通用しない」と打ち明ける。

 実際、セブン-イレブンはPOS(販売時点情報管理)レジを新型機に入れ替える際には1カ月に数百台、つまり営業時間中に1日数台ペースで作業を断行する。そうしたセブン-イレブンの「常識」でATMも設置していく。例えば、宮城県に設置した時は約3週間で330台を置き、県内の店舗をすべてATMで埋めてから一斉にオープンしたほどだ。

「ミスターATM」が新機能を世に問う

社内で「ミスターATM」と呼ばれるシステム部副部長の松橋正明は世界中のATMを調べ上げ、最高のコストパフォーマンスを引き出した (写真:北山 宏一)

 ATMを極める以上、ATMそのものの開発にも徹底的にこだわる。NECのATM開発部門からセブン銀行に転じたシステム部副部長の松橋正明が、開発元で古巣のNECにATMの機能面だけでなく、作り方まで指定するオーダーメイドを貫いた。コンビニの雑誌棚の半分と決められたきょう体の大きさに最先端の機能を盛り込みつつも、コスト構造を熟知する松橋が1円単位のコスト削減でも妥協しないセブン-イレブンの常識に沿うことで、本体価格を業界水準の約3分の1である1台300万円弱まで抑えてみせた。単にスケールメリットを生かすだけでは、ここまで安くはならなかった。

 松橋自慢のATMは新機能の宝庫である。盗難時に紙幣に緑色の特殊インクが付着する仕組みや、利用者を特定できるATM内蔵の防犯カメラ、顧客で混み合うコンビニ内の設置を想定した周囲から操作が見えにくい外観といったセキュリティー機能は特に充実している。業界の先陣を切って2006年4月に全ATMで対応したキャッシュカードのICチップの読み取り機能や、開業初日に目が不自由な顧客から求められた視覚障害者向けの音声ガイダンスの実現、海外発行カードへの対応や4つの外国語での画面表示、電子マネーのチャージ機能など、業界初の機能は枚挙に暇がない。特に日本の紙幣に合うインクの噴出機能や内蔵カメラは、2006~2007年に起きた犯罪事件の捜査に役立った。

 もっとも初の試みが多いだけに苦労も絶えない。インクで紙幣を汚して日銀に謝ることになったり、初めてICカードを使った顧客のICチップが壊れていて預金を引き出せないと、顧客からはカードの発行元ではなくセブン銀行に数十件のクレームが来たりした。このトラブルの時はセブン銀行のシステムにもミスがあり、ICチップの不具合との原因の切り分けにも手間取った。松橋はICカード機能を止めることまで考えたが、最終的には止めずに解決策を打ち出した。こうした止めないこだわりが、顧客の安心感につながっている。