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接続ルールの見直しを進めてきた総務省の接続政策委員会は,2009年7月21日に報告書案を提出した(写真1)。この問題を巡っては,NTTドコモとソフトバンク・グループが激しく対立してきたが,両者“痛み分け”の構図で決着への道筋が付いた。報告書案の内容は,通信事業者のビジネスを左右する項目も多く,今後への影響は大きい。

写真1●接続政策委員会は7月21日の会合で一定の結論を示す報告書案を提出
写真1●接続政策委員会は7月21日の会合で一定の結論を示す報告書案を提出

 NTTドコモとソフトバンク・グループは,議論の開始当初から激しい応酬を繰り広げていた。ドコモは「ソフトバンクモバイルの接続料が高止まりしている」と不満を表明し,全事業者を第二種電気通信設備制度の指定事業者にしても接続料の格差を是正すべきと訴えた。

 一方のソフトバンクは,「ドコモが持つ800MHz帯とソフトバンクモバイルが持つ2GHz帯には周波数特性の差があり,接続料に差があって当然。有利な周波数帯である800MHz帯を持つ事業者にローミングを義務付けるべき」といった主張を繰り広げた。

 こうした応酬を受けて接続政策委員会が下した結論は,両者の“痛み分け”とも言える内容だった(図1)。

図1●事業者の対立に落としどころを見せた接続ルール見直しの報告書案<br>特に対立していたNTTドコモとソフトバンク・グループの主張を整理。報告書案は両者の痛み分けとも言える内容になっている。
図1●事業者の対立に落としどころを見せた接続ルール見直しの報告書案
特に対立していたNTTドコモとソフトバンク・グループの主張を整理。報告書案は両者の痛み分けとも言える内容になっている。
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800Mローミング義務は「必要なし」

 ドコモの「全事業者を二種指定に」という主張は,「モバイル市場では設備競争やサービス競争が活発に行われており,ボトルネック性は認められない」と退けた。ソフトバンクの「800MHz帯保有者にローミングを義務付けるべき」という主張も,「800MHz帯保有者のドコモはシェア低減傾向にあるのに対し,2GHz帯保有者のソフトバンクはシェア拡大傾向にある」ことなどから「必要性に乏しい」と突っぱねた。

問題の営業費は原則排除へ

 もっとも両者の対立のきっかけは携帯電話の接続料の格差にあった。現在,携帯電話の接続料には二種指定の事業者を含め,各社共通の算定ルールは存在していない。いわば事業者が自主的に算定した接続料を申告する形だ。報告書案では,これまで“ブラックボックス”として扱われてきた接続料の算定方法にもメスを入れた。

 今回の議論の中では,自主的な算定に限界が来ていることが明らかだった。各事業者はそれぞれ,接続料格差の拡大への懸念や,他社の接続料会計の不透明さへの疑念を口にしていた。規制強化につながりかねないルールの共通化は,本来であれば事業者として受け入れ難い提案のはず。それでも,NTTドコモとソフトバンク・グループ,イー・モバイルは,あえて算定ルールの透明化を求めた。

 報告書案では,算定ルールの透明化のために,2009年度中に「第二種指定電気通信設備制度の運用に関するガイドライン」を策定し,2010年度からの適用を目指す。名称にこそ「二種指定」が含まれるが,非二種指定事業者であるソフトバンクモバイル,イー・モバイルにもガイドラインに沿った同様の取り組みを求める。

 接続料の算定に当たっては,設備費などコストをベースに原価を計算し,算定根拠の提出も求める。これまで接続料に含まれてきた営業費は原則排除する方針だ。営業費は現在,携帯事業者によって接続料の数%~数十%を占めるという。

 接続料の格差是正を求めてきたNTTドコモは,「接続を円滑公正に進める内容で評価する」(古川浩司企画調整室長)と表明する。ただ営業費排除によって接続料が引き下げられるため,経営への影響は免れないという。「100億円の減収,30億円の減益」(同)を予想する。