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何ごとにもPDCAサイクルは必要だ。プロジェクトの「見える化」で得た情報であっても,その有効性を検証する手間を惜しんではならない。情報・指標を客観的に検証することはもちろんだが,プロジェクトマネジャやPMOの勘や経験で補完したり,この検証を通して何らかの“気づき”を得たりすることも重要である。

松永幸大
マネジメントソリューションズ マネージャー,中小企業診断士


 前々回の『見える化で得た情報の「関連」を見える化する』と前回の『「見える化ツリー」を作る3つのステップ』では,「見える化」で得た複数の情報・指標の間にある「関連」をツリー化し,情報・指標の関連も見える化することの効果とツリー化の検討ステップについて述べました。

 簡単におさらいすると,「見える化」で得た複数の情報・指標の関連をツリー化することの効果として,大きく2つ挙げることができます。(1)個々の情報・指標の影響先・影響元がわかるようになることで,プロアクティブな対応が可能となること。(2)プロジェクトとして管理すべき情報・指標が整理され,プロジェクト管理工数の適正化を促進することです。

 ただ,1つだけ注意点があります。見える化で得た複数の情報・指標の関連をツリー化する作業は,基本的にプロジェクトマネジャやPMOの「経験」や「勘」に基づいています。これらを否定するつもりは全くなく,むしろ「経験」や「勘」は重要な要素と考えていますが,実際のデータとつき合わせることで,「見える化ツリー」をより精度の高いものにブラッシュアップできるはずです。また,実際のデータを分析する過程で,新たな気づきを得られるかもしれません。

 今回は,ツリー化した情報・指標の関連性を,実際のデータで検証する方法を述べたいと思います。データ量が多いほど分析結果の精度は高くなりますが,実際にはそれほどたくさんのデータを集められるわけではありません。そのあたりの事情を踏まえつつ,小さなプロジェクトでも実践できる簡便な方法を紹介します。

データを蓄積し,分析する

 ツリー化された情報・指標の関連を検証するには,とにかく検証を行うためのデータをできるだけ多く蓄積する必要があります。それを基に,統計的な相関分析を行います。データのサンプル数が少ないと,関連性を分析してもなかなか有意な結果は得られません。サンプルを少し追加するだけで分析結果が大きく変動するなど,統計的に不安定な状態だからです。こうした相関分析の基礎知識をあらかじめ勉強する必要はありますが,それほど難しい内容ではありません。入門書を一読すれば十分です。

 統計解析ソフトには,フリーソフト,シェアウエア,市販パッケージなど,いろいろありますが,筆者が使っているソフトはExcelです。主に,複数のデータ間の相関関係(相関係数)を計算する「CORREL」関数(図1),もしくはExcelのアドイン・ソフトである「分析ツール」から「相関」の機能を使っています。なお,Excel 2003の場合,「分析ツール」は,メニューバーで[ツール]-[分析ツール]を選択すると起動します。[ツール]メニューに[分析ツール]がない場合は,[ツール]-[アドイン]で「分析ツール」を追加してください。Excelでの相関分析の方法についてはほかの書籍や関連Webサイトを参照してください。

図1●ExcelのCORREL関数の設定ダイアログ
図1●ExcelのCORREL関数の設定ダイアログ

 データを分析するにあたって,サンプル数は多いほどいいのですが,前述したように実際にはなかなか難しいものです。特にプロジェクトや各フェーズの初期にはそうです。例えば最も基本的な進捗率のデータを集めるとしましょう。たいていは週次で集計するので,サンプルを50個集めようと思うと1年かかります。多くのプロジェクトでは,プロジェクトが終わってしまっているか,フェーズが変わっていることでしょう。

 実際のデータ分析は,週次データを月次で検証するといったサイクルになると思われます。データ蓄積のために日次でデータ収集を行う手もありますが,管理コストが増えて,やりすぎの感があります。

 月次でデータ分析を行う場合,データを集めだした当初はデータがあまりない状態です。それでも,簡便なデータ検証を行い,継続的にデータを蓄積・分析していくことで,徐々に有効な情報ができてくることになるでしょう。