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英BTグループ パブリック&ガバメント・アフェアーズ部門 プレジデント ラリー・ストーン 英BTグループ パブリック&ガバメント・アフェアーズ部門
プレジデント
ラリー・ストーン

 世界同時不況を克服しようと,各国で様々な景気刺激策が打たれている。中でも国際的なトレンドとなっているのが,各国政府によるICT戦略策定だ。

 米国では,オバマ政権が2009年2月に「米国再生・再投資法」(ARRA:American Recovery and Reinvestment Act)を策定,日本は7月に「i-Japan戦略2015」を発表した。英国でも6月に「デジタル・ブリテン」というICT戦略の最終報告書が固まった。

 これらのICT戦略から見える新たな潮流は,ブロードバンドのユニバーサル・サービス化。すなわち,すべての人にブロードバンド・アクセスを与えることだ。そのために政府内にファンドを作るといった,これまでの通信の世界には無かった動きも現れている。

固定電話がブロードバンド整備の財源

 英国のデジタル・ブリテン計画の狙いは,通信インフラの整備とデジタル・コンテンツの発展にある。具体的方策として,現在のブロードバンド・サービスを2012年までにユニバーサル・サービス化すること,光ファイバを使った次世代超高速ブロードバンド基盤整備のために政府主導の投資ファンドを設立すること,次世代携帯電話網の充実とサービス向上などを盛り込んだ。

 これまであまり進んでいなかったアクセス網の光化(NGA,Next Generation Access)も政府主導で進める。政府内に「ユニバーサル・サービス・ファンド」というネットワークの設計・調達部門を設け,メタルの固定電話やCATVなどすべてのレガシー固定回線に0.5ポンド(1ポンド=153円として,約77円)の税金をかけ,これをファンドの財源とする。2017年には英国全土の90%にNGAを整備する計画だ。英BTもこの計画に乗って,2012年までに英国の40%のエリアにNGAを配備する目標を立てている。英国政府がファンドを設けてユニバーサル・サービスを進めるのは,史上初めてのことである。これまでユニバーサル・サービスは,通信事業者であるBTが推進してきた。

 このような新たな動きに伴って,英国の規制当局であるOfcomの役割も拡大するだろう。これまでの競争政策に加え,投資刺激策や設備の効率性などにも目を光らせることになりそうだ。

 米国も政府主導でブロードバンド基盤の整備を進める。ARRAの枠組みの中で70億ドルを投資して雇用創出を刺激し,経済を活性化するために,地域ブロードバンドを拡充する計画だ。

 並行して米国政府は,米規制当局であるFCCに,ブロードバンドのユニバーサル化を目指す「ナショナル・ブロードバンド計画」の立案も指示している。通信会社のファンドに,政府が関与するようになるかもしれない。

 英国と米国の動きは,ICTという経済を支える基盤にブロードバンドが不可欠であることを物語っている。それに伴って通信業界に変化が訪れている。いずれにせよ,各国政府が進めるユニバーサル・ブロードバンドが,不況脱却のきっかけとなることを願っている。

ラリー・ストーン(Larry Stone)
英BTグループ パブリック&ガバメント・アフェアーズ部門 プレジデント
 BTグループの渉外部門であるパブリック&ガバメント・アフェアーズ部門のプレジデント。欧州連合(EU)との折衝,英国議会や政治家との渉外を統括するほか,世界のパブリック・アフェアーズ部門の責任者である。スポーツ,ワイン,ウォーキング,観劇が趣味。フランス語は堪能,日本語は日本在住のおり修学したが,発展途上。ロンドンではおいしい寿司やウナギの店を見つけるのが難しく,東京で住んでいた代々木上原が懐かしい。