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 今回は、総合窓口の導入において、自治体職員にとって最も難解となるバランスが悪く、窓口業務間の相互連携できていない「5.システムの壁」を乗り越えるためのポイントについて、3回にわたって検討したい。

バランスの悪いシステム化の格差

 これまで述べてきた「1. 窓口業務の見直しに対する壁」や「2. 人や組織の壁」を乗り越え、「3. 庁舎・フロアの壁」や「4. 予算の壁」を克服すれば、一応の「総合窓口」を実現することは可能である。しかし、それだけだと「総合窓口」で取り扱う窓口業務の膨大さに、かなりの労力を職員に強いることとなってしまう。そのため、職員が大量な窓口業務の手続きを円滑に処理するためには、どうしても情報システムの力を借りることが不可欠となる。

 「総合窓口」では、当然のことながら、これまでとは異なり、多くの窓口業務の手続きを取り扱うこととなる。そのためには、2つの難関を克服することが必要となる。

 まず、1つ目の難関は、窓口業務で「システム化の格差」が生じていることが挙げられる。実は、総合窓口で受け付ける窓口業務において、まだシステム化されていないケースが見られる。例えば、地方自治情報センター(LASDEC)が行った「市区町村における業務システムの導入及び運用に要する経費等の調査結果(平成19年度)」によると、「自治体における窓口業務のシステム化の状況」は、住民情報関連や税業務、国保・年金は90%以上である一方、戸籍は74.1%、学齢簿は56.3%といったシステム化の格差が生じているのである(図1)。

図1●総合窓口に関連する業務システムの導入状況
(出典:地方自治情報センターの「市区町村における業務システムの導入及び運用に要する経費等の調査結果」をもとに筆者加工)

 こうしたバランスの悪い格差のある窓口業務のシステム化は、総合窓口の「システムの壁」を乗り越えるための1つ目の難関として立ちはだかることとなる。なぜ、そのような問題が生じるのだろうか。このことを住民のライフイベントに関する手続きの根幹をなしている住民基本台帳と戸籍に関する窓口業務から、確認しておきたい。

 まず、住民基本台帳は、「住民基本台帳法」に基づく法定自治事務として、その市町村の区域内に住んでいる住民に対する居住関係を公証する公簿であり、居住と生計をともにしている者を一世帯として、世帯ごとに編成され記録の適正な管理されるものである。このため、総務省ほかの関係各省庁が定めた「住民記録台帳事務処理要領」に基づき、自治体の窓口で手続きが行われている。

 一方、戸籍は、「戸籍法」に基づく第一号法定受託事務として、その市町村の区域内の本籍を有する国民に対して、出生年月日、出生事項、親子関係等の身分関係を公証する公簿である。このため、全国一律の基準により処理することが求められ、法務省地方法務局の「戸籍事務取扱準則」および通達等の指示に従って、自治体の窓口で手続きが行われている。

 このことから、住民基本台帳と戸籍は、それぞれ所管する国の省庁が異なるものの、日本国籍を有する同一人物を住居関係と身分関係の2つのそれぞれ違った側面から記録し、公証する公正証書として台帳管理するものであり、両方とも自治体の窓口業務の根幹をなす業務といえる。

 このため、住民記録台帳にある本人の氏名、出生年月日、男女の区別、本籍および筆頭者の氏名について、戸籍に記載されている者について正確に記載することとされている。また、個人の住民異動情報を本籍地の市町村が職権で記載するものとして、戸籍の附票を作成し、戸籍の表示、氏名、住所、住所の定めた年月日を記載することにより、相互連携が保つ役割を果たしている。さらに、窓口業務の手続きにおいては、住民記録台帳に関する届け出を受けた場合、本籍地市長村長に戸籍の附票記載事項通知を送付、戸籍に関する届け出を受けた場合、住所地市長村長に住民票記載事項通知を送付することにより、通知受け取った市町村は、住民からの届け出によらず、市長村長の職務権限(つまり、職権)で、職権記載書を作成し、住民票の記載修正を行うといった相互連携が行われている(図2)。つまり、住民基本台帳と戸籍は、それぞれ緊密な相互連携が図られなければ、それぞれの業務処理が成り立たなくなってしまうのである。

図2●住民基本台帳と戸籍の相互連携
(出典:東京都市町村戸籍住民基本台帳事務協議会 住民基本台帳事務手引書作成委員会編著『初任者のための住民基本台帳事務 6訂版 』 日本加除出版、2008年、P.207より筆者加工)

 このことから、住民基本台帳と戸籍は、仮にどちらかがシステム化されていなかった場合、さらに関連する手続きも複数受け付けることとなる総合窓口においては、職員の事務処理にかかわる時間が大幅に増えることとなり、結果として住民の待ち時間が大幅にかかることとなってしまうのである。

 これまで住民基本台帳は、一般的に1970年代の後半から電算処理化が開始され、1980年の半ばからオンライン処理化が開始されている。一方の戸籍は、1994年に法務省が戸籍法117条の2と3を新設し、戸籍情報を磁気ディスクに記録することが認められることになってから、電算化が開始された。この結果、戸籍のシステム化はかなり遅れているというのが実態である。

 住民の待ち時間をできる限り解消し、さらに住民満足度を向上させるためには、総合窓口で取り扱う窓口業務において、できる限り業務システムで処理されることが求められる。その中でも前述した戸籍のシステムが導入することは、極めて重要となる。例えば、2001年に総合窓口を導入した佐賀市では、その前提として戸籍情報システムを稼働させることとなっていたことを成功要因の一つとして挙げている(参考資料はこちら)。

 総合窓口において、格差のある窓口業務をシステム化する場合、総合窓口の業務範囲となる必要な手続きのシステムによる処理が行われるように、バランスを良くすることが極めて大切なのである。

 そのためにも、特に「戸籍のシステム化」は、不可欠といえるだろう。しかしながら、戸籍のシステム化では、戸籍情報の入力作業に最も費用を要することとなる。したがって、財政上の理由で戸籍のシステム化に取り組めないでいる自治体に対しては、入力費用を低減する方法を考案、あるいは、国による財政面での支援といった検討を行ってもよいのではないだろうか。また住民目線に立って住民の利便性を考えると、将来的には戸籍がある市町村以外でも戸籍証明が取れるようにすることが望ましいだろう。

 これらを実現するには、申請を受けた自治体が戸籍のある自治体からPDFファイルで戸籍証明を送り、申請を受けた自治体が印刷して交付する方法や、韓国のようにデータを国が一元的に管理し、申請を受けた自治体の名前で証明を交付する方法などが考えられる。いずれも法律等の制度変更が必要となってしまうが、検討の余地はあるだろう。さらに、戸籍データベースと住基のデータベースを一本化することも、将来的には検討すべきではないだろうか。

窓口業務間の相互連携の必要性

 2つ目の難関は、窓口業務間で「相互連携ができていない」ことが挙げられる。これまで総合窓口で取り扱われる窓口業務に関するシステムは、原課の窓口業務の処理単位で個別に縦割りでバラバラにシステムが導入され、さらには業務ごとに専用端末が配置されてきたのが一般的である。こうした専用端末は、多くの自治体にありがちな専門窓口では全く問題にはならないが、総合窓口ではやっかいな存在となる。例えば、1カ所の窓口で住民票の写しや印鑑登録証明書、税証明書などといった複数の証明書を発行する場合、現状のままだと、窓口業務を処理するシステムを複数立ち上げて、それぞれの専用端末から処理するといった極めて非効率的な業務形態を生み出してしまうのである。

 このため、こうした窓口業務間の縦割りを克服するためには、窓口業務に関するデータを参照し、場合によっては更新して、手続きを円滑に行える相互連携が必要となる。さらに、これまで、年齢や所得といった条件の資格による手続きの有無の判断を各窓口の専門職員が行っていた形態から、総合窓口では多くの窓口業務を一人の担当者が担うこととなるため、それらの判断が適切に行うことのできるようにサポートすることが求められてくる。

 この難関を克服するためには、住民記録、印鑑登録、外国人登録、戸籍事務といった総合窓口に関連する業務システムにおいて、(1)関連する窓口業務を受け付けて、一括業務処理ができ、(2)手続きに必要な個人・世帯に関連するデータが参照・更新でき、(3)窓口業務を行う職員に対して専門知識がなくても支援してくれる…というような、有機的に複合した業務横断な窓口の受付をサポートする機能が必要となろう。

 次回のコラムでは、これら3つの機能を要した総合窓口システムのあり方について、具体的に解説していきたい。

* 筆者は、2008年4月より在職先を変更していますが、本連載の内容は筆者個人の見解であり、在職している組織とは関わりはありません。

瀧口 樹良(たきぐち・きよし)
札幌総合情報センター 主任研究員(課長職)
瀧口氏の写真 1971年神戸市生まれ。駒澤大学大学院人文科学研究科社会学専攻修士課程修了。在京のメーカー系シンクタンクにおける公共系コンサルティング活動を経て、現在は札幌市の第三セクターである札幌総合情報センター株式会社に在職。主に自治体の業務改善、行政経営およびIT活用戦略等を中心に積極的な活動を行っている。著書に『地域情報化 認識と設計』、『東アジアの電子ネットワーク戦略』(いずれも共著)など。