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 米国の大手コンサルティング会社が開発した「間接材」の調達コスト削減手法「ストラテジック・ソーシング」を解説した本書が、厳しい経済情勢下で、注目されている。編集した栗谷仁氏に手法の実力を聞いた。(聞き手は、杉山 泰一)

ストラテジック・ソーシングの実績を教えてほしい。

 この手法は1980年代後半に独自動車メーカーとA.T.カーニーが共同で確立し、90年代後半から日本企業への適用を開始した。2008年12月末までに81社の日本企業で4060億円を削減した。41社は都銀や地銀などの銀行業だが、最近は製造業が増えている。海外では、米フェデラルエクスプレスや米シアーズなど500社以上が適用した。

 ストラテジック・ソーシング手法でコスト構造の改善対象ととらえる「間接材」の範囲は広い。企業が外部から調達している製造原材料費以外の様々なモノやサービスを指す。具体的には、コピー代やオートリース代、事務用品代、通信費などの諸費、販促に関連した印刷費やメディア広告費、宅配やチャーターなどの物流費、清掃や警備、ビル管理などの施設関連費、IT(情報技術)関連費用などである。

 本書では、こうした間接材のサプライヤーたちとの信頼関係を維持しつつ、いかにして企業グループ全体でその調達コストを下げるかに多くのページを割いた。例えば、間接材の種類別にサプライヤーの事業構造を分析して、価格交渉を論理的に進めるやり方を紹介している。

 多くの企業は、当社が定義する間接材を部署や子会社ごとに調達しているうえ、適正な市場価格を把握できていない。確かに、一般消費財と違って間接材の多くは市場価格を把握しづらい。サプライヤーに無理な値下げ要求をして交渉が難航したり、コストを一度削減できてもそのノウハウを継承できていなかったりする企業も目立つ。

そうした間接材問題に関して、日本企業に特徴的な点はあるか。

 事業の選択と集中が進まず、極端なコングロマリットになっている企業が多い。下請け的な性格を持つ子会社や系列会社と癒着のような状態になっている企業も少なくない。つまり、グループ経営のやり方に問題が多いのだ。グループ一丸となって外部から間接材を一括で購入すれば、ボリュームディスカウントを獲得できる。下請け的な子会社や系列会社からの調達価格も市場価格をベースに適正化すべきだ。

 工場での業務改善の熱心さで世界的に知られる自動車メーカーですら、間接材のコスト削減にはあまり踏み込んでこなかった。経営陣が注目していなかったからだろう。

 今回の「100年に1度」と言われる経済危機は、日本企業が構造転換を図り、真のコスト競争力を身に付ける良い機会だととらえることができる。実際、当社と取引のある企業の中でも、優秀な経営者たちはそうした発言をしている。

最強のコスト削減

最強のコスト削減
栗谷 仁著
東洋経済新報社発行
2520円(税込)


栗谷 仁(くりや・ひとし)
米コンサルティング会社大手A.T.カーニーの日本法人パートナー。早稲田大学法学部卒業、米ハーバード大学経営大学院修了。医療機器メーカーなどを経て、同社に入社。