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 KDDIとNTTコミュニケーションズ(NTTコム)はそれぞれ,2009年7月1日に新たなWANサービスを開始した。KDDIの「KDDI Wide Area Virtual Switch」(以下,WVS)と,NTTコムの「バーストイーサアクセス」(以下,バーストイーサ)である。厳密には,WVSはスイッチ・ベースの新しいバックボーンを使ったWANサービス,バーストイーサは既存の広域イーサネット「e-VLAN」やIP-VPN「Arcstar IP-VPN」の新しいアクセス・メニューだ。共通する目玉機能は,拠点から送出する特定のトラフィックについてだけ,契約した帯域を超える大容量トラフィックを通すバースト通信機能である。

 信頼性やコストを軸に既存の広域イーサネット/IP-VPNと比較すると,WVSはギャランティ型サービスに近い。対するバーストイーサはインターネットVPNなど価格重視のベストエフォート型サービスの要素を掛け合わせた「いいとこ取りのサービス」(NTTコムの高部文宏・ビジネスネットワークサービス事業部サービス開発部担当部長)である(図1)。

図1●両サービスの位置付け
図1●両サービスの位置付け
どちらもギャランティ型サービス並みの料金で,ベストエフォート型よりも信頼性が高いが,位置付けは若干異なる。

 ただ,どちらのサービスも目指す方向性はほぼ同じ。KDDIとNTTコムは,ユーザーの拠点間を結ぶネットワークがデータ・センターを中心とする構成に変化していることに着目し,そのニーズに応えるソリューションを提供しようとしているからだ。

物理回線の最大帯域まで使える

 最近,多くのユーザー企業がコンプライアンス(法令順守)やコスト削減といった目的から,サーバー集約を進めている。SaaS(software as a service)を導入する企業・組織も目立ち始め,いわゆるクラウド・コンピューティングのモデルに向かっている。

 ところが,こうした場合,従来は拠点内に閉じていたトラフィックがWANに流れ出すと同時に,サーバーを設置した拠点やデータ・センターにトラフィックがどうしても集中する。しかも,情報系システムへのアクセスやファイル転送など一部のアプリケーションでは,突発的に大容量の通信が発生する(バースト)。こうしたトラフィックをさばけるようにするためにユーザーは,データ・センターを中心に,WANの増速を余儀なくされる。

 とはいえ,ユーザーにとってみればサーバー集約に伴う応答性能の劣化も,WANのコストアップも避けたい。こうしたニーズに応えようと,通信事業者が打ち出したサービスが,WVSでありバーストイーサである(図2)。これらのサービスでは,契約帯域が10M ビット/秒でも,物理インタフェースが100M ビット/秒であれば,契約帯域を超える大容量のトラフィックに最大で100M ビット/秒までの帯域を利用できる。しかも料金は従来の10M ビット/秒のギャランティ型サービスと大差ない。

図2●各種の要望を反映した新サービスが登場<br>データ・センター中心のネットワーク構築に対応できるWANサービスのニーズが高まっている。こうした声に応えるために,KDDIとNTTコミュニケーションズはバースト通信に対応した新サービスを2009年7月に開始した。
図2●各種の要望を反映した新サービスが登場
データ・センター中心のネットワーク構築に対応できるWANサービスのニーズが高まっている。こうした声に応えるために,KDDIとNTTコミュニケーションズはバースト通信に対応した新サービスを2009年7月に開始した。
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 従来の広域イーサネットやIP-VPN(いわゆるエントリーVPNは除く)で使うギャランティ型サービスは,契約帯域が10M ビット/秒なら,そこまでしか使えなかった。帯域が不足した場合に,契約帯域を上げる必要があるが,その分のコストが跳ね上がる。

WVSは乗り換え前提,NTTコムは既存網で

 それぞれのサービスの特徴を,もう少し見ておこう。WVSの場合,契約帯域が少なくても,KDDIおよび同社提携先のデータ・センターに向けた通信に関しては最大で物理インタフェース速度まで利用できる。WVSの場合,これを「トラフィックフリー機能」と呼ぶ(図3)。

図3●バースト通信を利用できる条件は異なる<br>KDDIのWide Area Virtual Switchではデータ・センター(DC)向けの通信でバースト通信ができる。NTTコミュニケーションズのバーストイーサアクセスでは,拠点の種類にかかわらずバースト通信ができる。
図3●バースト通信を利用できる条件は異なる
KDDIのWide Area Virtual Switchではデータ・センター(DC)向けの通信でバースト通信ができる。NTTコミュニケーションズのバーストイーサアクセスでは,拠点の種類にかかわらずバースト通信ができる。
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 例えばKDDIの広域イーサネットPowered Ethernetで100M ビット/秒のイーサネット回線は月額約96万円。これに対してWVSで契約帯域を10M ビット/秒,バースト帯域を最大100M ビット/秒とすると料金は約38万円。これは,データ・センター向けの通信が多いユーザーにとっては実質的な値下げに等しい。WVSはPowered Ethernetなどとはバックボーンが異なるため,サービスの乗り換えが前提になる。

 一方,バーストイーサの場合は,既存のe-VLANやArcstar IP-VPNのアクセス・メニューを変えるだけで良い。ユーザーが指定したアプリケーションについては物理インタフェースの帯域の10%を確保(一部帯域確保)。それ以外のアプリケーションでは残りの帯域をベストエフォートで利用できる。