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 IT企業のだれもが、顧客満足度を高めることを目標の一つに掲げる。その具体策として、顧客の現場へ踏み込み、現場の声をシステム構築・運用に反映させる取り組みを定着させようとしている。そうした姿は利用企業にも確実に伝わり、利用企業をも巻き込んでいく。

現場の声を代弁し改革を支援
富士通

 この6月、一通の手紙が富士通の野副州旦社長の元に届いた。差出人はパナソニック電工グループで保守サービス事業を担う、パナソニック電工テクノサービスの田中利秋社長だ(当時。7月に退任)。

 手紙の趣旨はこうだ。「フィールド・イノベータの方々は人柄もよく大変頑張っていただいています。また、改善手法、分析手法など弊社若手にとって大変な刺激になっております。社長様から一言お口添えいただけましたら幸甚です」。

 フィールド・イノベータ(FIer)とは、富士通が「業務変革のパートナー」に位置付ける技術者のこと。ITにとどまらず、業務全般にわたり現場の課題を可視化し、その解決策を考え、提案する。現在、その対価は無償である。

 パナソニック電工テクノサービスは2008年上半期に、修理状況や個人の作業状況をリアルタイムに把握できる新システムを構築。これをテコに全社業務の標準化を図ることで、経営層は1カ月当たり5.5時間の作業効率化を狙っていた。

 同プロジェクトを推進する「フロント業務改革チーム」に、富士通総研フィールド・イノベーション推進本部の有馬淳氏ら3人のFIerが参画したのが昨年の9月。それから2カ月後、有馬氏は田中社長と竹内保 常務取締役経営企画部部長にこう告げた。

 「このまま一気に新システムを全国に展開するのは危険です。確かに10%ほど作業時間を短縮できていますが、現場の半数は作業効率が悪くなったと感じています。半数が敵に回ったらシステムは使われませんよ。5.5時間の時短を掲げることも逆効果です。数字に追われ現場は苦労しています」。

図1●富士通の「フィールド・イノベータ」は、パナソニック電工テクノサービスの業務改革チームに、“現場の代弁者”として参加する
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 有馬氏がこう断言できたのは、システムを先行導入した九州支店で1カ月間、週3日ずつ導入前後でどんな作業にどの程度の時間がかかったかをストップウオッチで計測し続けたため。作業の手が空いた瞬間を見計らって、業務内容も教えてもらった。

 経営層にとって、有馬氏の苦言は厳しいものだが、同時に納得もできた。「薄々感じてはいたが、数値が現場を追い詰めていた」(竹内常務)。

 その後、有馬氏は新しいシステム展開方法を提案する。改革チームが押しつけるのではなく、現場のリーダー格の人材に先導役として広めてもらう方法だ。そこでのFIerは、“現場の代弁者”になると同時に、課題の発見方法や改善策のまとめ方などをリードする。

 竹内常務は、「最初は無償だから受け入れたFIerだ。だが、我々が聞いたつもりで聞いていなかった現場の課題を報告してくれるなど、現場の改善意欲を高めてくれた」と、FIerを評価する。

 同社システムの開発・運用を担当するパナソニック電工インフォメーションシステムズの久野晃 取締役開発担当も、「これまで、システムを作り放しだったことが改めてわかった。FIerの力を借りながら、現場の声に耳を傾けられる当社流FIerの育成を急ぐ」と話す。