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 「2011年は,新聞とテレビという二つのマスメディアにとっては墓碑銘を打ち立てられる年となる」──。本書は昨今の新聞やテレビなどマスメディア衰退の実態とその理由,さらにはその先に待ち受けている新たな競争の世界を描いた本だ。新聞記者出身で,ITやネット関連の取材を勢力的に進める著者ならではの,現場の声を含んだ内容にぐいと引き込まれる。

 主題こそマスメディアの衰退だが,本書を通じて語られるのが,「プラットフォームを制するものこそ世界を制する」という視点。本書は「プラットフォーム競争の行方」という隠れたテーマとしても読み応えがあり,通信業界にとっても参考になる指摘は多い。

 プラットフォームの重要性を説く著者の説明は明快だ。グーグルの及川卓也氏が用いたという「コンテンツ」,「コンテナ」(プラットフォーム),「コンベヤ」(伝送路)という三つのレイヤーのアナロジーを例に取る。例えば新聞は「コンテンツ=新聞記事」,「コンテナ=新聞紙面」,「コンベヤ=販売店」,テレビは「コンテンツ=番組」,「コンテナ=テレビ」,「コンベヤ=地上波,衛星放送,CATV」という垂直統合モデルで発展してきたわけだ。しかし,インターネットが登場したことでこのモデルは崩壊。「コンベヤ=インターネット」,「コンテナ=ヤフーニュース,検索エンジン,YouTube」と,三層のうち二層までが他のプレーヤに奪われ,その結果,広告配信や課金などビジネスの主導権をコンテナを握るプレーヤに牛耳られた。それこそがマスメディア衰退の真の理由というわけだ。

 もう一つ,マスメディア衰退の決定打となると著者が指摘するのが,2011年に予定される情報通信法(融合法制)の施行だ。レイヤー型の法体系になることで,テレビ局のビジネスモデルがオープン化の流れにさらされると説く。そこで次のビジネスの覇者となるのは,広告配信や課金機能を備えた次世代STB(セットトップ・ボックス)を押さえたプラットフォーム・プレーヤだと著者は予想する。

 本書はメディア業界に属している記者にとって身につまされる話ばかりでもあった。著者はメディアの生き残り策として「各分野の専門家が高度に専門的な知見を提供すること」を説く。記者もそのような役割を果たせるよう肝に銘じた次第だ。

2011年 新聞・テレビ消滅

2011年新聞・テレビ消滅
佐々木 俊尚著
文藝春秋発行
788円(税込)