PR
シグマクシス 代表取締役CEO 倉重 英樹氏
シグマクシス 代表取締役CEO
倉重 英樹氏

 社会生態学者のピーター・ドラッカー氏は、かつて「誰も知らない世界がやってくる」と語ったが、同時に「その社会の中では主たる資源が知識であるということは変わりない」、「ナレッジワーカーが中核の働き手となり、プロフェッショナルが競争していく社会になる」とも言っている。我々は、今まさに工業社会が知識社会に変化していく真っ只中にいる。この状況は、IT技術がこの社会変革を根底から推進していると言えるだろう。


「課題解決価値」がもたらしたビジネスモデルの転換

 私がビジネスの世界に入った1960年代の価値観は「付加価値」だった。製品パッケージを変えたり、新しい部品を使った、機能を新たに加えた、などの形で付加価値を付けるというのが、モノ作りの世界では大きな使命感になっていた。付加価値を付けると競争力が強まり、売り上げが増えていった。

 ところが80年代の半ばくらいから、製造メーカーの経営者が「付加価値を付けても売れなくなった」と言うようになった。これは、いわゆる「課題解決価値」という価値観が買う側に生まれてきたことを意味する。この商品・サービスは自分達の課題をどのくらい解決してくれるのか、その価値が高ければ買おうという、買う側の判断に価値観が移っていった。これが、サプライサイドの経済からコンシューマサイドの経済に大きく体質転換していった背景である。

 ビジネスを課題解決価値という形に転換していこうとすると、まずお客様の課題を把握しなければいけない。課題を把握するには時間もコストもかかるので、すべてのお客様の課題を把握するわけにはいかない。どのお客様の課題をつかまえるのが当社にとっていいか、という経済原則が働くことになる。

 そうした経済環境で出てきた概念が「お客様の生涯価値」という概念である。付き合いが長く生涯価値が高いお客様の課題を解決していくのが、ビジネスにとっていちばんいい。

 今のビジネスの世界には、付加価値、課題解決価値、顧客の生涯価値という3つの価値観が存在していて、課題解決価値のほうが付加価値よりもウエイトが高い。まさにこれが、世の中でソリューション・ビジネスと呼ばれているビジネスモデルである。 ソリューション・ビジネスは、お客様の課題を把握してその課題を解決するものだから、お客様の課題をつかまえるという工程が増える。従来型のプロダクトビジネスからソリューションビジネスに展開して、お客様との間でパートナーとしての相互関係を築くことが「V2P (Vender to Partner)トランスフォーメーション」である。

パートナー関係構築に必要なマルチカルチャーの社内体制

 お客様との関係を見た場合、最も薄いのが「ベンダー/カストマー」関係である。これに対して、お客様のことをよく知ってコラボレーションする、目標を共有化する、あるいは活動を同期させて結果をシェアする「パートナー/パートナー」関係は、お客様との距離を徹底的に縮めた関係である。この関係をどうやって作り込んでいくかが、今の時代の大きなチャレンジではないかと思う。

 お客様とパートナー関係を作り上げていこうとすると、社内体制はマルチカルチャーにならざるを得ない。カルチャーの1つは、効率性を追求するカルチャーだ。標準化をどんどん進めることでコストを下げていく。ここでは、人はコストと見なされ、カットの対象になってきた。バブルの崩壊以降、過去20年間くらい、大半の企業がこの効率性追求の世界で価格競争に明け暮れてきたのではないか。

 もう1つは創造性を追求するカルチャーである。創造性は、多様性のコラボレーションのシナジーである。創造性を追及するには、まず多様性を上げる、いわゆるダイバーシティマネジメントを徹底することがある。また、ITを徹底的に使って、情報シェアリングを確実に行っていくことも、創造性につながる。

 創造性の世界では人は資産であり、活用の対象である。カットの対象ではない。いかに社員を活用するかを本気で考えていくのが、価値や魅力を開発していく創造性追求の世界である。

 V2P トランスフォーメーションの実現は、効率性を追求するカルチャーと創造性を追求するカルチャーという性質の異なったものを、1つの組織の中に共存させていく、いわゆるマルチカルチャーをマネージする社内体制を作り上げていくことにほかならない。具体的には、お客様との継続的なコラボレーションを実現していくために、CRM、プロフェッショナル人事制度、プロジェクト制度、ナレッジマネジメント(KM)、デジタル/モバイルオフィス、という5つのコンポーネントを整備していくことになる。

 これら5つのコンポーネントのうち、デジタル/モバイルオフィス、KM、プロジェクト制度の3つを取り入れるとワークスタイルが変革することになる。昨今、ワークライフバランスが言われているが、私はワークライフバランスを単なる時短だとは思っていない。会社がやるべきことは、能率や創造性が上がるワーキング環境を提供し、プロジェクトチームにデリゲーション(権限委譲)することである。そうすると、社員が自分が働く時間と場所をチーム内だけで決定できる。社員が働く時間と場所を自由に選べるようにすることが、会社側のとても重要な役割だと思っている。

 以上の3つに、プロフェッショナル人事制度を追加すると、ダイバーシティマネジメントという世界になってくる。さらにCRMを足すと、V2P トランスフォーメーションが完成する。

外国人を組織に取り込めるかが多様性の視点で重要になる

 私は、日本にとって今いちばん必要な多様性は外国人だと考えている。文化の違う人をいかに組織の中に取り込めるかが、多様性の視点で一番大事だと思う。

 最後になるが、21世紀は人の時代である。今のビジネス界のキーワードであるイノベーション、リーダーシップ、ライフワークバランス、ダイバーシティ、コラボレーションなどは、すべて人間がやることだ。社員の能力とモチベーションをいかに高いところで維持していくかが、これから先の大きなチャレンジではないだろうか。