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日本マクドナルド 代表取締役会長 兼 社長 兼 CEO 原田 泳幸氏
日本マクドナルド 代表取締役会長 兼 社長 兼 CEO
原田 泳幸氏

 日本マクドナルドは、経営環境が厳しい外食産業にあって、光栄にも「一人勝ち」との評価をいただいている。だが、過去には低迷期もあった。それをいかに回復し、どんな成長戦略を描いているのかを紹介したいと思う。

 当社は1971年に第1号店をオープンして以来、新しい食文化を提供し、売り上げ、店舗数とも急激に拡大してきた。ところが、92年以降2003年まで長い低迷期があった。その原因は「ひずみ」である。

 レストランビジネスは、人を育ててから店舗に投資するのが鉄則である。だが、低迷期には、人への投資を中断してしまっていた。売上高、来店者数とも減少しているにもかかわらず、店舗拡大に投資していたのだ。

 この教訓から学んだのは、徹底して人に投資することである。人、モノ、金のすべての経営資源を集中させ、業績の回復を図ったのである。結果は如実に表れた。2004年から2007年までを回復期と位置付けているが、この4年間、全店の売上高、来店者数ともに増加した。

 この回復期に最も注力したのが、レストランビジネスの基本となるQSC(品質、サービス、清潔さ)の徹底と、顧客がマクドナルドに期待する商品を提供するという基本に立ち返ったことだ。

新規顧客の獲得や人材育成で改革を成功に導く

 具体的には、顧客の商品に対する従来の認識を変えてもらえるよう、メニュー戦略の変更や価格改定を行った。ここで重要になるのが優先順位である。まず、基本となるQSCを行ったうえでメニュー戦略や価格改定に取り組まなければ、投資効果は出てこない。

 そして、回復期から成長期を迎えた今も、QSCを最優先にしている。成長すればするほど基本が大事になるとの考えから、全社一丸となってQSCを向上させるため企業努力を続けているところだ。

 過去5年間、当社は人事改革、さらなるグローバル化、メニュー戦略、地域戦略、マーケティング・イノベーションなどの構造改革に取り組んできた。その成果として、全店売上高は5年間で1316億円増え、2008年には国内外食産業初の5000億円を超えた。そして来店者数も5年間で4億人増え、15億人に達している。

 構造改革成功のカギは、顧客数を増やしたこと。特に新規顧客の獲得に注力した。当社のビジネスは、来店者数を増やして顧客単価を上げ、利益率を高めることである。だが、この3つは同時には行えない。ある時期は来店者数を増やし、ある時期は単価を上げるといったバランスを考えることがポイントになる。

 成功のカギの2つめは、投資の継続である。経営状況が厳しいからといって投資コストを削減する企業もあるが、厳しいときにこそ積極的に投資することが大切である。投資する際は、原資を捻出するため、徹底的に無駄を排除した。どこに投資し、どこを削減するか。選択と集中の判断が重要になる。

 3つめの成功のカギは、人材育成である。社員だけでなく、アルバイトのクルーを含めた教育を実施した。また全店でのコンテストの実施など、モチベーションを高めるための投資も行ってきた。

 成長を持続するための当社のコア・コンピタンスとして、メニュー、スーパー・コンビニエンス、ファン・プレース・ツー・ゴーの3つがある。

 まず、納得感のあるメニューと価格戦略がポイントになる。社内ではベスト・バリュー・フォー・マネー(価格を超える価値)と言っている。また、財務を最適化できるような価格設定を行うため顧客の購買履歴を分析するなど、様々なノウハウがある。

 そして、顧客の利便性を高めるスーパー・コンビニエンスは、マクドナルドのビジネスモデルそのものだ。われわれが提供するのは「便利さ」であり、その実現手段となるのがe-マーケティング戦略である。ケータイを利用するe-クーポンの会員は約1300万人、Webサイトの閲覧は月間1億2000万ビューに上る。

顧客に便利さを提供するe-マーケティング戦略

 以前は、販促用に印刷したクーポンのチラシを新聞に折り込むため、多くの時間と労力、費用を費やしていた。当時は、割引が不要な顧客にもコストをかけてクーポンを配布していたことになる。e-クーポンに置き換えることで販促のスピードがアップし、しかも本当に必要な顧客に届けられるようになった。

 さらに、電子マネーのe-キャッシュ、地域別のセグメントマーケティング、CRMと連携してリアルタイムに顧客動向を分析するe-リサーチ、店外で注文するプレオーダーなど、様々な分野でケータイの活用が見込まれる。

 e-マーケティングの利点は、ビジネスのPDCA(計画・実行・評価・改善)のサイクルをリアルタイムに検証しながら、方向性を決められることである。加えて、顧客との双方向のコミュニケーションで、究極のワン・ツーワン・マーケティングが行え、マーケティングの投資効果を最大化できると考えている。

 成長を持続する3つめのポイントは、来店者を引き付けるファン・プレース・ツー・ゴーである。子ども向けのハッピーセットは年間に1億個以上の販売実績がある。こうした魅力づくりにITを活用し、仮想的にパーソナライズすることも可能になってきた。

 その第1段階が携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」とのコラボレーションによる「マックでDS」だ。DSを持参した子どもたちが店内の無線通信を介してゲームソフトをダウンロードできるサービスである。将来はDSへクーポンを配布するなど、様々な活用が考えられる。

 こうした成長のための取り組みを推進するうえで、選択と集中が重要になる。店内のメニューボードに表示するメニュー数を減らしていることも、その一例である。メニュー数が多いと、来店者は商品を選ぶのに時間がかかる。ボードに表示するメニューを限定することで選択から注文、提供までの時間を短縮する狙いがある。とはいえ、減らしすぎるとバラエティ感が失われるため、ボードのメニューでは満足できない顧客が選べるように、全メニュー表はカウンターに置いておく。

 当社にとって、ITは「ピープルビジネス」を支えるインフラでもある。例えば、クルーのモチベーンションによって、売上高が左右されることもある。そこで、クルー自身がモチベーションを高められるよう、DSを活用した人材開発プログラムを開発し、トレーニングの質とスピードを向上させている。

 ITを経営判断にどう活用するか。使う側の熱意があってこそ、ITの投資効果が上がると確信している。