PR
三菱東京UFJ銀行 常務取締役 コーポレートサービス長 根本 武彦氏
三菱東京UFJ銀行 常務取締役 コーポレートサービス長
根本 武彦氏

 三菱東京UFJ銀行では、旧東京三菱銀行と旧UFJ銀行のシステムを2段階に分けて統合した。まずDay1プロジェクト(2006年1月から本稼働)で、国内市場系と海外系を統合。2008年5月にスタートしたDay2プロジェクトは、Day1時点で併存状態のままであった預金・為替・融資・外為などの国内勘定系、情報系、チャネル(店舗、ATM、インターネットなど)を統合し、同一の商品・サービスを提供できるようにするのが目的。Day2の開発期間は約2年、移行期間は7カ月に及んだ。

 システム対応の柱は3つで、(1)データ量・処理量増加に対応するインフラ増強、(2)旧両行の既存商品、サービスレベルの違いを取り込む差分機能の開発、(3)旧システムから新システムへの取引データの移行、センター移転である。開発規模11万人月、ピーク時のシステム要員数6000人、システム投資額2500億円、開発拠点国内外22カ所、サブシステム数200という前例のない大プロジェクトだった。

リスクを埋没させないための体制・仕組みや職場の整備に腐心

 まず準備・立ち上げでは、「敵を知り、己を知る」を掲げ(万全の準備)、メンバーとの志、目標の共有(正々の旗)、実効性のある体制(堂々の陣)を整えた。

 万全の準備の柱となるリスク分析ではリスクを「システム自体のリスク」と「プロジェクト遂行上のリスク」に大別。全員で洗い出した846の遂行上のリスクそれぞれを定量化し、解決策・担当・期限を定め組織全体で共有化を図った(Risk Breakdown Structure)。また、スケジュール間、システム間等相互の依存関係を分析し、着手する優先順位を付け、不可逆ポイントを早めに押さえて手戻りやトラブルの連鎖の防止に努めた。全員が共有するプロジェクトの旗印やゴールも定めた。ゴールは客観性、数値化、検証可能性に着目し、232項目を具体的に設定した。

 体制は、システム統合推進部をハブに、経営層、システム部門、業務部門を三位一体とする推進体制を構築。巨大組織を横断的に制御する為のチームを組成、責任体制も明確にし、人任せにしない制度を作った。

 第2の施策は、現場力を最大化するためのES(従業員満足度)の向上が主眼だった。出陣式では参加者がハチマキ姿で臨み、こぶしを突き上げて一致団結した。標語を書き込んだ関連グッズも配布。プロジェクト開始後は、隣接するホテルに仮眠用の部屋を確保し、弁当の味も確認した。経営トップからは「人を耕せ、そのための予算はつける」と言われていた。高い士気を継続できたチームプレーでは、これら一連の取り組みが果した成果も大きかった。

 第3の施策が、全員の力と英知を結集する仕組み作り。過去の開発経験・知識を元に各種標準手法( PMBOK 、CMMI、EVMSなど)と金融庁ガイドラインを加えた基本管理体系に、Day1プロジェクトで得た経験や教訓を上乗せし、ガバナンスフレームワークの高度化を図った。留意したのは、「気づきの機会を豊富に」「レビュー・バウチャー主義」「コミュニケーション&可視化の徹底」という点である。問題に対する気付きを促進するため、Risk Breakdown Structureやチェックリストの活用、三現主義(現場、現実、現物確認)の徹底を行った。「大丈夫だろう」といった曖昧な事象があれば、断言できるまで確認を徹底した。

 レビュー・バウチャー主義に関しては、上流工程の品質管理を重視し、システム部門の有識者や国内・海外の製品開発者にも直接参加してもらい、バウチャーに基づいて多角的にレビューした。コミュニケーション&可視化の徹底では、部門の壁を超えた言葉や用語、ルール、手続きなどを統一。さらに、SaaS型アプリケーションでポータルを2カ月で構築。経営者や関係者間のメッセージやトピック、マニュアル類などを登録し、随時確認できる環境を整えた。200のサブシステムのテスト進捗状況や対応残(テスト不良残)を、8項目にわたって図表などで可視化し、品質管理ガイドに沿って頻繁にチェックした。

プロジェクトを成し遂げるのは「人」、平時の積み重ねが生きる

 第4の施策は、EA基軸のIT活用。都市計画の視点を取り入れ、統合後の中長期的な進化の方向性を踏まえ"進化先取り"のチャンスとした。その具体的成果としては、営業店端末やATMを制御する営業店サーバーのセンター集中化がある。各営業店に分散配置していた2000台のサーバーを、メインフレーム上に統合した。4000万顧客の決済に直結するシステムであるため、論理区画(LPAR)の並列化や筐体の冗長化で高信頼性を確保。LinuxをOSとすることで保守・拡張性も向上させている。毎秒1000件の処理能力を、必要に応じて拡張できる柔軟性も備えている。

 振り返って思うのは、平時・日常から地道に使命を全うし、人を育て、優れた組織文化を醸成させることの大切さだ。付け焼刃ではできない。この受賞は、経営の強力なスポンサーシップとリーダーシップの下、高い使命感と強い責任感を持ってプロジェクトに参加した仲間全員で手にしたものだと思う。

システム統合に成功した三菱東京UFJ銀行がグランプリ
 「情報システムを構築・活用して顕著な成果を上げている企業を発掘し、成功のノウハウを広く共有する」――こうしたテーマを掲げて日経コンピュータが創設したIT Japan Awardが、経済産業省をはじめ、経営情報学会、情報システム学会、情報処理学会、情報処理推進機構(IPA)、日本情報システム・ユーザー会(JUAS)の後援を受けて、今年で3回目を迎えた。今回、経済産業大臣賞(IT Japan Award 2009グランプリ)に輝いたのは、三菱東京UFJ銀行「システム本格統合(Day2)プロジェクト」の取り組み。
 旧東京三菱銀行と旧UFJ銀行のシステムを完全統合した一大プロジェクトは、ミスは許されなかった。そのプレッシャーをはねのけながら、リスク管理を徹底。メンバーの士気を保ちながら、最後までやり遂げた熱意は賞賛に値する。
 さて今回のIT Japan Awardでは応募期間の2009年1月から4月までに78件がノミネート。最終選考では、審査員長であるIPAソフトウェア・エンジニアリング・センター所長 松田晃一氏をはじめとする、審査委員の厳正な審査の結果、10件が賞に輝いた。準グランプリは、いなぎ図書館サービス、セイコーエプソン、チューリッヒ保険、ツムラ、テクノプロジェクト、日本通運が受賞。特別賞には、東邦チタニウム、リコー、良品計画が選ばれた。グランプリの贈賞式は、7月1日、IT Executive Forum 「IT Japan 2009」会場のホテルニューオータニで開催された。
「IT Japan Award 2009グランプリ」の贈賞式。
「IT Japan Award 2009グランプリ」記念の楯。
「IT Japan Award 2009グランプリ」の贈賞式と記念の楯。
[画像のクリックで拡大表示]