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今、クライアントOSが面白い

 今年9月1日から米マイクロソフトの「ウインドウズ7」企業向けボリュームライセンスの販売が始まった。4日前の8月28日には、米アップルから「スノーレパード(Snow Leopard)」という新バージョンが発売され、シングルパックのバージョンアップは3300円だ。

 さらに、正体はまだ不明ながら米グーグル(Google)が「クローム(Chrome) OS」というウェブ対応を強く意識した新しいOS(オペレーティング・システム)を開発している。しかも、無償で配布するというのだ。いまクライアントOSが面白くなってきている。

 クライアントOSと企業の情報コストはかかわりが深い。今や、社員全員がパソコンなどを情報端末として使うようになっているからだ。さらに、モバイル用であるとか、組織に固定的に置いてある共有用であるとか、もある。

 導入台数は従業員数を2、3割上回る。企業によってはそれ以上の場合もあるかもしれない。この数がばかにならない。私が全社のシステムにかかわり出した2001年には、ユーザーサポートなどの業務コストも含めて、クライアントにかかわるコストが総コストの30%以上にもなっていた。

 OSは単独なわけではなく、ハードウエアが伴う。ある面、OSが要求するリソース(CPUの性能やメモリーの容量など)が、ハードウエアを選択する。OSはアプリケーションソフトウエアがあって初めて仕事に使えるようになる。利用するアプリケーションによっても要求するリソースがある。

 OSが利用したいアプリケーションを制限することもある。利用形態によって最適選択が必要であるし、だから選択によってコストの抑制もできるし、無駄な投資も起こり得る。そんな観点から今回はクライアントOSとコスト削減の話をしよう。

ウインドウズ・ビスタ(Vista)の天敵?

 ウインドウズの前バージョンの「ビスタ」が企業向け販売を始めたのは2006年11月30日であった。私にとってこの日は実に印象深い。発売当日の日経産業新聞にビスタに対するネガティブな記事がかなり大きく出た。タイトルも「企業向けビスタ、飛びつけない。投資効果に疑問、トラブル懸念」とある。

 その記事の冒頭には、私の実名入りで否定的なコメントが掲載されている。取材はすべて広報部を通すので取材として受けた覚えはない。前日の夕方に知り合いの記者から電話があり、雑談話の流れでビスタの導入についてどう思うかと尋ねられた。システム部門としての結論は「ビスタは導入せず、現状のまま使い続ける」と出していたので、それを伝えた。

 記事の内容に嘘はないが、それ以来「アンチ・ビスタ」の急先鋒のように扱われ、メディアが否定的な記事を書きたい時にはよく取材を受けた。私は企業ユースとしてのOSのデザインミスを指摘し、コスト抑制の面から導入を止めただけのことだ。その結果として無駄な投資を避けることができた、と確信している。

 企業向けのクライアントOSのほとんどはウインドウズであることは間違いない。ほかは若干のマック(Mac)OSが使われているくらいで、サーバーでは大躍進のリナックス(Linux)もクライアントでは1%あるかないかといった程度だろう。ウインドウズが圧倒的シェアを保っている1つの理由は「マイクロソフト・オフィス(Microsoft Office)」の普及だ。

 私は本業の設計業務の傍ら1991年から部門にマッキントッシュ(Macintosh)のネットワークを普及させ、部門全員が情報端末を持つワークスタイルの変革を10年間進めてきた。会社にまともにウインドウズが導入されたのはウインドウズ95からだ。

 当時ウインドウズ95を担いだシステム部門は、ユーザー部門にOS統一を要求したが、使い勝手や扱いの容易さなどに圧倒的な差があり、既に1000台を超えるマックがネットワークに繋がって運用されていたことなどから、21世紀まで使い続けたのだ。従って企業内に2つのクライアントOSが存在することになった。

 ウェブ技術などがまだ進化していない時代でもあり、システム部門から見ればアプリケーションの対応や管理などが厄介だ。ユーザー部門から見ると、オフィス製品の互換性の悪さが最大の障害であった。ウインドウズ版とマッキントッシュ版の互換性がよくない。

 ユーザーのリテラシーが高ければ互換性の悪さも乗り越えられるのだが、それを全員に求めるわけにもいかない。これが完全互換であったらほとんどの問題は解消していたであろう。結局、オフィス製品によってベンダー・ロックインが起こるのだ。このオフィス製品の非互換性は、社内のクライアントがウインドウズ OSに統一されビスタ導入を検討する際にも大きな障害になった。