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高橋 淳一/デロイト トーマツ コンサルティング テクノロジー・メディア・テレコミュニケーションズ インダストリー シニアマネジャー

スマートフォンへの受信機能の搭載など,インターネット・ラジオのユビキタス環境が整いつつある。盛り上がりの兆しを見せるグローバル市場の動向を基に,インターネット・ラジオの普及要因と,日本市場での展開に向けて求められるものについて解説する。

(日経コミュニケーション編集部)

 インターネット・ラジオ市場が拡大の兆しを見せている。多くのメディアが徐々にデジタル化していく中で,いまだに一定の人気を博しているアナログ・ラジオ。その“ラジオ”が持つメディア特性をオンラインやインターネットの特性と組み合わせることによって生み出されるシナジーは,IPTVや第3世代携帯電話(3G)のモバイル・テレビなど「モバイルとメディアの融合」に重要なヒントを与える可能性がある。

 世界のアナログ・ラジオは25億台,ラジオ局は4万4000局ある。いまだにアナログ方式が主流だが,ラジオもまたデジタル化への移行が進んでいる。

 世界では,地上デジタルやデジタル衛星でラジオが放送されている。しかし聴取者数では,アナログと比べて見劣りがする。特に衛星ラジオは,録音機能付き専用携帯レシーバで高音質かつ広い地域で同じチャンネルを楽しめるなどを売りに加入者数を伸ばしていたが,ここ数年は鈍化傾向にある。その理由は,音楽再生が可能な携帯電話の登場だろう。月額使用料金が必要な衛星ラジオ専用レシーバよりも,音楽も聞ける携帯電話の方に価値を見出す人が増えたことが要因と思われる。

 一方,インターネット・ラジオは言うまでもなくデジタル化している。音響・音声メディアはほとんど大きな帯域幅を必要とせず,技術的な観点からはネットワークやWebとの相性がよい。とはいえ,インターネット・ラジオ局は現在1万局以上あるものの,従来型のラジオに比べて需要はいまだに小さい。

Wi-Fiラジオが本格的に離陸する

 しかし2009年は,インターネット・ラジオ,特に無線LAN機能を搭載した小型ラジオ(Wi-Fiラジオ)が本格離陸する可能性がある。世界のインターネット・ユーザーがほぼ15億人で,その3分の2がブロードバンド・アクセス可能として試算すると,インターネット・ラジオの潜在市場は2009年に約20%拡大すると予想される。

 典型的な特徴としては,“仕事中”がインターネット・ラジオを聴くプライム・タイムであるという聴取者が増えている点が上げられる。また,インターネット・ラジオが“新曲”発見の場だという経験を持つ聴取者が増える傾向にあるのも見逃せない。インターネット・ラジオの魅力に関するある調査によると,従来は放送型ラジオが新曲を発見する場の中心だったが,2007年にはその場としてインターネット・ラジオが台頭したとの結果がある。

 専用のインターネット・ラジオ受信機もさらに値下がりするとみられる。既にWi-Fiラジオは,2008年末に100ドル以下で購入できた。それ以上に重要なのは,インターネット・ラジオ受信機として使える,無線LAN機能搭載のスマートフォンが増えると予測される点である。生活動線に密着したスマートフォンが専用レシーバの代わりとなり,その常時携帯性がインターネット・ラジオへの潜在的なアクセス機会を増やすことにもなるからだ。

 小売業者は2009年,Wi-Fiラジオの販促活動を強化すると思われる。このサービスはおおむね加入料がいらないため,小売業者としては加入料が必要な機器よりも売りやすいだろう。