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 ITpro EXPOの目玉の一つが,最新のICT技術を展示会に生かす「ICTの実験場」だ。今回は,AR(Augmented Reality:拡張現実)技術を採用する「EXPO AR」とクラウド・サービスを活用する「EXPOバーチャル」を企画している。


 ITpro EXPOではこれまで「ICTの実験場」という主催者企画を実施してきた。これは,最新のICT技術を使って展示会をより面白く役立つものにする試みである。今回は,二つのテーマでICTの実験場に取り組む。

AR技術を展示会に生かす「EXPO AR」

 一つは,AR(Augmented Reality:拡張現実)技術を利用した展示会案内システム「EXPO AR」だ。実験の内容を説明する前に,ARについて簡単に解説しておこう。

 ARとは,現実の空間に対して情報を付け加えて表示させることで,現実を“強化”する技術である(図1)。手法としては大きく,(1)空間を自動認識して情報を追加する空間認識型と,(2)明示的なマーカーを利用して情報を追加する2次元マーカー型──がある。

図1●AR技術の概要
図1●AR技術の概要
風景(場面)や2次元マーカーをカメラで認識し,その認識情報を基にして,カメラの映像に付加的な情報を重ね合わせて表示させる。現実の風景や環境の映像に情報を付け加えることから,「拡張現実」あるいは「強化現実」と呼ばれる。屋外でのナビゲーションや見どころ案内のほか,機器のサイズ感を設計に反映する場面などで利用が想定されている。
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 (1)は例えば,GPSを使って自らの位置情報を取得し,電子コンパスで向いている方角を割り出して,端末のカメラが映した現実の風景に情報を付加して表示するような方法だ。位置情報の取得に無線LANアクセス・ポイントの情報を利用したり,実際の画像認識技術を組み合わせることで,より認識の精度を高めることができる。ただし,この方法を実現するには,こうした機能を備えた端末が必要になる。

 一方,(2)はQRコードのような2次元マーカーを端末のカメラで認識させ,そのマーカーに関連付けられた情報を現実世界の風景に重ね合わせることでARを実現する方法である。カメラ以外はソフトウエアで実装できる。

大日本印刷,日本電子専門学校が協力

写真1●AR 用の3次元CGアニメを制作してくれる日本電子専門学校高度コンピュータグラフィックス科の皆さん
写真1●AR 用の3次元CGアニメを制作してくれる日本電子専門学校高度コンピュータグラフィックス科の皆さん
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 このAR技術をITpro EXPOの展示会場内の情報提供手段として使えないか──というのが今回の実験の趣旨だ。数社の企業に打診したところ,大日本印刷が協力を申し出てくれた。同社は,パソコンに接続したUSBカメラでさまざまな印刷物を写すことでディスプレイ上に3次元CGを重ねて表示するといった技術を持つ。

 今回は,マーカー型でARを実現することにした。展示会場は屋内なのでGPSが使えないことに加え,ARの中では“枯れた”技術なので実装が容易だと判断したためである。

 このARアプリケーションには,3次元CGのモデルとアニメーションが必要になる。こちらの制作は,日本電子専門学校の学生の皆さんが協力してくれることになった(写真1)。

AR用拠点とツアーで体験環境を用意

 こうしてなんとか体制はできた。次のステップは,実験の内容を決めることだ。

 実験は,来場者自身が体験できないものでは意味がない。そこで当初は,来場者が自前のカメラ付き携帯電話でARを利用できるものにしたいと考えた。しかし,処理能力やアプリケーション基盤などの制約でそれは難しいと判断した。

 次に思いついたのはスマートフォンだ。実は大日本印刷では,Windows Mobile端末を使ったシステムのデモも用意しており,「これを使えばいいのでは」と考えたわけである。ただし,ライセンスや誤動作時の対処の面などから,こちらも実現には至らなかった。

 そこで今回は,来場者の皆さんにARを体験していただく拠点として,会場内の7カ所に「EXPO ARステーション」を設置することにした(図2)。ステーションではUSBカメラを接続したパソコンでARアプリケーションを稼働させる。来場者が周囲にあるマーカーをそのカメラで写すことで,ARを体験できるという仕組みである。また,会場で配布する展示会ガイドブックに印刷されたマーカーをそのカメラで読み取ることでARを実感できるアプリケーションを作成する計画だ。

図2●EXPO ARステーションの概要
図2●EXPO ARステーションの概要
展示会の来場者がARアプリケーションを体験できる。パソコンにUSBカメラを接続し,ARアプリケーションを稼働させる。説明パネルや展示会ガイドブックに掲載された2 次元マーカーをUSBカメラで読み込むことでARを体験できる。会場内の7カ所に設置する予定。
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 さらに,ARの可能性を来場者に感じていただくために,「EXPO AR体験ツアー」を行うことにした。EXPO AR体験ツアーでは,(1)Windows Mobile端末,(2)USBカメラを接続したネットブック,(3)高性能パソコンにつないだヘッドマウント・ディスプレイ─の3種類の端末でARを体験できるようにする。ここで使うパソコンは,日本エイサーの協力で提供していただくことになった。

 こうしたAR環境を構築するために,2009年9月現在,大日本印刷でアプリケーションを開発中だ。カメラでマーカーを写すと,画面上にITpro EXPOのニュースをリアルタイムで表示する電光掲示板が現れるといったアプリを企画している(図2の右)。 並行して,AR環境を彩る3次元CGアニメを,日本電子専門学校の学生の皆さんに制作していただいている。実際にどんなアプリケーションがどのようなCGで動くのか,会場に来て確かめていただきたい。

「iPhoneでやりませんか?」

 来場者の自前の端末でARを体験してもらうのをあきらめかけていたとき,「ネットワーク最前線」の打ち合わせでクウジットを訪れた際,「会場内のARをiPhoneでやりませんか?」と持ちかけられた。同社はKART(Koozyt AR Technology)と呼ぶマーカーを使ったAR技術の展開を計画している。その一環としてiPhone対応を進めており,それをEXPO用に提供してくれるというのだ。

 ただ,iPhone用アプリケーションは米アップルのAppStore経由でなければ配布できない。スケジュールとして展示会の会期に間に合うかどうか微妙なところ。状況は逐次,ITpro EXPO特設サイトやメールマガジン「ITproメールEXPOスペシャル」でお伝えする予定である。